地域で子育てを支える仕組みとして注目を集める「ショートステイ里親制度」。福岡市ではこの制度が充実していますが、まだ多くの子育て家庭に知られていない「隠れた宝石」とも言えるサービスです。今回は、この制度の魅力と活用方法について詳しく解説します。
他の一時預かりサービスとの違いとメリット
子育て中の親が一時的に子どもを預けるサービスには様々な種類がありますが、ショートステイ里親制度には独自の強みがあります。
一時預かりサービスの種類と比較
サービス名 | 預かり時間 | 預かり場所 | 対象年齢 | 申込期限 | 費用 |
---|---|---|---|---|---|
ショートステイ里親 | 1泊2日~7日程度 | 里親家庭 | 0~18歳未満 | 原則7日前まで | 2,750円~5,350円/日 |
保育所一時預かり | 日中のみ | 保育所 | 0~5歳 | 前日まで | 2,000円~2,500円/日 |
ファミリーサポート | 時間単位 | 援助会員宅 | 0~12歳 | 3日前まで | 800円~900円/時間 |
ベビーシッター | 時間単位 | 自宅 | 制限なし | 当日可能な場合も | 1,500円~/時間 |
ショートステイ里親制度のメリット
- 家庭的な環境:施設ではなく、一般家庭で過ごせるため、子どもの心理的負担が軽減
- 宿泊を含む長時間の預かり:数日間の連続した預かりが可能で、保護者の入院や出張などにも対応
- 幅広い年齢対応:乳児から高校生まで対応可能
- 専門的な研修を受けた里親:子どもの発達や心理について理解のある里親が対応
- 行政の関与:福岡市が関与することで安全性と信頼性が担保
- 低料金:所得に応じた減免制度があり、経済的負担が少ない
- 宿題や学校の準備などの対応:学齢期の子どもの生活リズムも維持
他のサービスとの組み合わせ方
ショートステイ里親制度は、他の子育て支援サービスと補完しあうことでより効果的に活用できます。
- 保育所通園中の子ども:平日は保育所、週末は里親ショートステイを利用
- ファミリーサポート:短時間の預かりはファミサポ、長時間・宿泊はショートステイ里親
- 地域子育て支援センター:日常的な交流や相談はセンターで、具体的な預かりニーズはショートステイ里親で対応
福岡市のショートステイ里親の現状と実績
福岡市のショートステイ里親制度は、全国的に見ても充実した取り組みを行っています。
利用実績と統計
- 年間利用件数:約300件(2023年度)
- 登録里親数:約50世帯(2023年現在)
- 利用理由割合:
- 保護者の疾病・入院:30%
- 育児疲れ・育児不安:25%
- 冠婚葬祭・出張:20%
- 介護・看護:15%
- その他:10%
- リピート率:約40%(一度利用した家庭が再度利用する割合)
利用者の声
「初めは子どもが不安がると思いましたが、里親さんとそのお子さんが温かく迎えてくれて安心して過ごせたようです。私自身も思っていた以上にリフレッシュできました。」(30代・2児の母)
「仕事の出張と子どもの学校行事が重なり途方に暮れていたとき、このサービスを知り救われました。子どもも『また行きたい』と言うほど楽しく過ごせたようです。」(40代・シングルファーザー)
対象年齢と利用可能なケース別ガイド
ショートステイ里親制度は様々なケースで活用できますが、子どもの年齢や状況に応じた注意点もあります。
年齢別の対応と特徴
乳児期(0~1歳)
- 利用可能条件:特に制限なし
- 特別な配慮:授乳、離乳食、アレルギー対応
- 持ち物の目安:
- 哺乳瓶・ミルク(必要な場合)
- おむつ(できれば1日8枚×日数+予備)
- 着替え(できれば1日1〜2組×日数+予備)
- お気に入りのおもちゃ
幼児期(2~5歳)
- 利用可能条件:特に制限なし
- 特別な配慮:
- トイレトレーニング状況
- 就寝のルーティン(添い寝など)
- 食事の好き嫌い
- 持ち物の目安:
- お気に入りのぬいぐるみ
- 着替え(1日1〜2組×日数+予備)
- おむつ(必要な場合)
- 通園が必要な場合は園用品
学童期(6~12歳)
- 利用可能条件:特に制限なし
- 特別な配慮:
- 学校の宿題サポート
- 習い事の送迎(可能な場合)
- 友人関係への配慮
- 持ち物の目安:
- 学用品(宿題・教材)
- 着替え(1日1組×日数+予備)
- 習い事の道具(必要な場合)
思春期(13~17歳)
- 利用可能条件:本人の同意が望ましい
- 特別な配慮:
- プライバシーへの配慮
- 学習環境の確保
- 思春期特有の心理面への理解
- 持ち物の目安:
- 学用品
- 身の回り品
- 通信機器(必要な場合)
特別なニーズに対する対応
発達障害のあるお子さん
- 事前相談:子どもの特性を詳しく伝える
- 専門研修を受けた里親:発達障害について理解のある里親とマッチング
- 環境調整:刺激を調整できる環境の確保
- 視覚支援:必要に応じてスケジュールボードなどの準備
医療的ケアが必要なお子さん
- 専門的な対応:看護師資格を持つ里親の確保
- 医療機関との連携:かかりつけ医との情報共有
- 緊急時の対応:明確なマニュアル作成
- 物品の準備:医療器具・薬剤の適切な引き継ぎ
利用理由別の活用方法
保護者の病気・入院
- 利用期間:治療期間に合わせて調整(最大30日)
- 申請方法:医師の診断書などを添付
- 準備のポイント:治療予定と回復見込みの明確化
仕事の都合(出張・残業など)
- 利用期間:出張期間に合わせて設定
- 申請方法:勤務先の証明書など添付
- 準備のポイント:仕事のスケジュールを明確に
育児疲れ・リフレッシュ
- 利用期間:2~3日程度が一般的
- 申請方法:面談で状況を説明
- 準備のポイント:リフレッシュ計画を考えておく
冠婚葬祭
- 利用期間:式典と移動日数を含めて設定
- 申請方法:招待状や案内状のコピーなど
- 準備のポイント:行事の詳細を伝える
その他の理由
福岡市のショートステイ里親の利用理由に決められた制限はありません。お住まいの区役所の子育て支援課窓口へ気軽に相談してみましょう。
申請手続きの簡単3ステップ
ショートステイ里親制度の利用は思ったより簡単です。基本的な流れを3ステップで説明します。
ステップ1:相談・申請
相談窓口
- 各区役所子育て支援課
中央区 電話:092−718−110
受付時間:平日8:45~17:15
東区 電話:092−645−1068
受付時間:平日8:45~17:15
南区 電話:092−559−5195
受付時間:平日8:45~17:15
西区 電話:092−806-0004
受付時間:平日8:45~17:15
城南区 電話:092−822-2131
受付時間:平日8:45~17:15
早良区 電話:092−804-2011
受付時間:平日8:45~17:15
必要書類
- ショートステイ里親利用申請書
- ショートステイ受入票
申請のタイミング
- 余裕をもって希望利用日の1ヶ月前までに申請するのが理想的
- 緊急の場合はすぐに相談(最短で数日前からの受付も可能な場合あり)
ステップ2:窓口での聞き取り・マッチング
窓口でショートステイ里親利用申請書とショートステイ受入票を記入
目的
- 子どもの性格や特性の把握
- 家庭状況の確認
- 適切な里親とのマッチング
聞かれること
- 子どものアレルギーや持病
- 生活リズム(食事・睡眠など)
- 好きなこと・苦手なこと
- 普段の過ごし方
- 保護者の希望や心配事
マッチングのポイント
- 地理的な条件(学校・習い事への通いやすさ)
- 里親の経験や得意分野
- 家庭環境(他の子どもの有無など)
- 相性や価値観の近さ
ステップ3:事前顔合わせ・利用開始
利用開始
- 持参品の最終確認
- 質問タイム、家の様子の説明など
- 連絡体制の確認
- 子どもへの最終説明
利用中のサポート
- 必要に応じて里親からの連絡
- 緊急時の対応体制
里親さんってどんな人?選定・研修制度
ショートステイ里親として活動するためには厳格な選定プロセスと専門的な研修が必要です。どのような人が里親になるのか、その全容を解説します。
里親になるための条件
基本的な要件
- 年齢:原則25歳以上65歳未満
- 経済的安定:生活を維持できる収入がある
- 居住環境:子どもが安心して生活できる住居
- 家族の同意:同居家族全員の理解と協力
- 健康状態:子どもの養育に支障がない健康状態
人物像としての条件
- 子どもの権利と福祉を尊重できる
- 多様な価値観や文化的背景を受け入れられる
- 子どもの成長発達について理解がある
- チームワークと連携ができる
- 継続的な学びと成長に意欲がある
選定プロセス
申請から認定までの流れ
- 説明会・講習会への参加
- 里親登録申請書の提出
- 家庭訪問・面接調査
- 書類審査と参考人調査
- 児童福祉審議会での審査
- 登録・認定
調査される内容
- 家族構成と関係性
- 住居環境と安全性
- 地域とのつながり
- 養育経験や知識
- 動機や子どもへの思い
研修制度
基礎研修
- 子どもの権利と福祉
- 子どもの発達と心理
- 愛着形成と喪失体験
- 児童虐待の理解
- 家族支援の基本
専門研修
- 子どものケアと接し方
- 実践的な養育技術
- 問題行動への対応
- 関係機関との連携
- リスク管理と緊急対応
里親の多様なバックグラウンド
職業的背景
- 教員・保育士などの教育関係者
- 看護師・医療職
- 会社員・公務員
- 自営業
- 専業主婦・主夫
家族構成
- 子育て経験のある家庭
- 若い夫婦
- シングル里親
- 子どものいない家庭
- 多世代同居家庭
動機の多様性
- 社会貢献への意欲
- 子どもが好きという思い
- 自身の経験からの共感
- 専門性を活かしたい願望
- 家族の提案
子どもの気持ちに寄り添う預け方・迎え方
ショートステイ里親制度を利用する際、子どもの心理的な負担を最小限にするための配慮が重要です。預ける側の親ができる工夫と、里親側の取り組みを紹介します。
預ける前の準備
子どもへの説明のポイント
- 年齢に応じた言葉選び
- ポジティブな表現(「お泊まり体験」など)
- 具体的な日程の説明(カレンダーに印をつけるなど)
- 里親家族の写真や情報の共有
- 「必ず迎えに行く」ことの約束
心理的準備を促す方法
- 絵本などで「お泊まり」の疑似体験
- 必要なものを一緒に準備する
- お気に入りのおもちゃや毛布の持参
分離不安への対処
- 子どもの気持ちの受容と共感
- 不安表現を否定しない
- 具体的なスケジュールの提示
- 「寂しさ」は自然な感情と伝える
- 安心できるアイテムの用意
預ける当日の流れ
スムーズな別れ方
- 長引かせない短めの別れ
- 明るい表情と前向きな言葉かけ
- 具体的な「迎えの約束」の確認
- 自信を持たせる言葉かけ
- 里親への信頼を示す態度
里親へ伝えておくこと
- 子どもが不安になったときの対処法
- 好きな食べ物・嫌いな食べ物
- 睡眠のルーティン
- よく使う安心フレーズや習慣
- 近況や最近の出来事
子どもが持っていくと安心するもの
- お気に入りのぬいぐるみ・毛布
- 普段使っている食器や歯ブラシ
- 日常を感じられる小物
迎える時の配慮
お迎え時の適切な対応
- 約束した時間の厳守
- 温かい笑顔での再会
- 大げさな喜びよりも自然な対応
- 子どもの体験への関心を示す
帰宅後のケア
- 体験の振り返りと共有
- 普段の生活リズムへの緩やかな復帰
- 特別な時間を設ける(お気に入りの食事など)
- 感情表現の受け止め
- 次回(必要な場合)への前向きな言及
子どもの反応と対処法
- 甘えが強くなる → 十分なスキンシップと安心感の提供
- 反抗的になる → 感情の受容と穏やかな対応
- 興奮して落ち着かない → 静かな環境と冷静な対応
- 無関心を装う → 押し付けずに様子を見守る
心理的なフォローアップ
子どもの変化を観察する視点
- 食事の様子
- 睡眠の質
- 表情や言動の変化
- 遊びの内容
- 家族との関わり方
里親体験の肯定的な意味づけ
- 「新しい友達ができた」という側面の強調
- 「一人でできたね」という成長の実感
- 「特別な体験ができた」という価値付け
- 「家族の絆を感じる」機会としての意味
- 「社会の中のつながり」を学ぶ経験
次回利用への準備
- 前回の経験を肯定的に振り返る
- 子どもの意見や希望を取り入れる
- 前回と同じ里親を希望する選択肢
- 少しずつ慣れていくプロセスを伝える
- 子どもの成長を認め、自信を持たせる

まとめ
この制度は「精神的に辛くて子供に当たってしまう」「急な入院で子供を見てくれる人がいない」といった親のSOSに対応し、家庭的な環境で子どもを安心して預けられる環境を提供します。実家が遠い核家族や、頼れる人が周りにいない子育て世帯にとって、まさに埋もれた支援制度と言えるでしょう。
利用を希望する方は、福岡市内の里親家庭または子どもの村福岡での受け入れが可能で、専門職員がコーディネートを行います。研修を受けた里親が自宅でお子さんをお預かりします。福岡市の地域全体で子育てを支える仕組みが整備されています。まずはお住まいの子ども支援課へご相談ください。
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