養子縁組や養育里親になることは、子どもに安定した家庭環境を提供する素晴らしい貢献です。この文書では、法的な手続きだけでなく、実際の経験者の声も交えながら、より深く日本の養子縁組・里親制度について解説します。
1. 養子縁組について
養子縁組には「普通養子縁組」と「特別養子縁組」の2種類があります。
普通養子縁組
普通養子縁組では、養親と養子の間に法律上の親子関係が生じますが、実親との法的関係も存続します。
主な要件
- 養親は20歳以上であること
- 養親と養子本人の合意が必要(養子が15歳未満の場合は法定代理人が代わりに合意)
- 養親または養子に配偶者がいる場合は、原則としてその配偶者の同意が必要
- 未成年者を養子にする場合は家庭裁判所の許可が必要(ただし、配偶者の連れ子や孫を養子にする場合は不要)
手続きの流れ
- 家庭裁判所の許可を得る(未成年者の場合)
- 養子縁組届を市区町村に提出
- 必要書類
・養子縁組届:市区町村の窓口で入手可能
・戸籍謄本:双方の戸籍謄本(発行後3ヶ月以内のもの)
・未成年者の場合の家庭裁判所許可審判書:申立ての約1〜2ヶ月後に発行
・本人確認書類:マイナンバーカード、運転免許証など - 家庭裁判所申立ての詳細
・申立書(家庭裁判所で入手)
・養親となる人の戸籍謄本
・養子となる子の戸籍謄本
・収入を証明する書類(源泉徴収票など)
・養育環境を説明する資料(家族構成、住居状況など)
・申立費用:収入印紙800円程度
特別養子縁組
特別養子縁組は、子どもの福祉を目的として、実親との法的関係を終了させ、養親との間に実の親子と同様の関係を成立させる制度です。
主な要件
- 養親は配偶者がいること(夫婦共同縁組が原則)
- 少なくとも一方が25歳以上(もう一方は20歳以上)であること
- 養子となる子どもは原則15歳未満(ただし、15歳に達する前から養親に監護されていた場合は18歳未満まで可能)
- 実父母の同意が原則必要(ただし虐待や遺棄などの場合は例外あり)
- 養親となる方が養子となる子どもを6ヶ月以上監護していること
手続きの流れ
事前準備と相談
- 児童相談所または民間あっせん機関への相談
- 縁組希望理由の整理と夫婦間での十分な話し合い
研修と調査
- 特別養子縁組前提の研修(約3〜5日間)
- 家庭訪問:住環境チェック、夫婦関係の調査、養育方針の確認
マッチング
- 子どもとの相性を考慮した慎重なマッチングプロセス
- 子どもの背景や健康状態の情報共有
試験養育期間
- 6ヶ月以上の同居による養育(この期間中も定期的な訪問調査あり)
- 養親子関係の形成過程の確認
家庭裁判所の審判
- 詳細な申立書類の準備
- 裁判官との面接(場合によっては数回)
- 審判確定までの期間(約2週間〜1ヶ月)
戸籍手続き
- 審判確定後の養親の戸籍への入籍手続き
- 新しい戸籍謄本の取得
真実告知と心理的サポート
- 子どもの年齢に応じた真実告知の方法
- 必要に応じた専門家によるカウンセリング

特別養子縁組に登録してもすぐにお子さんとのご縁があるかわかりません。養子縁組を希望する夫婦の中にはお子さんがすぐに来ると思っていたのに、なかなか連絡がなく、思ったより時間がかかってしまい、待ちきれずに民間の団体を通じて養子縁組の手続きをする方もいらっしゃいます。
民間の団体はそれなりの費用がかかってしまいますが、お金を出してでも1日でも早くお子さんを望んでいるご家族がいるという事です。
2. 養育里親について
養育里親は、何らかの事情で実親と暮らせない子どもを、一定期間、家庭で養育する制度です。法的な親子関係は生じません。
養育里親の種類
- 養育里親:実親のもとへ帰ることを前提に一定期間養育
- 専門里親:虐待や非行など特別なケアが必要な子どもを養育
- 養子縁組里親:養子縁組を前提として子どもを養育
- 親族里親:3親等以内の親族が子どもを養育

私が登録しているのは養育里親です。私が普段お会いする里親さんの多くは、養育里親さんか養子縁組里親さんです。養子縁組里親さんの多くは、養育里親にも登録されています。
養育里親になるための要件
- 要保護児童の養育についての理解および熱意と、児童に対する豊かな愛情を有していること
- 経済的に困窮していないこと
- 都道府県知事が行う養育里親研修を修了していること
- 里親本人またはその同居人が欠格事由に該当していないこと

養育里親になる際に自宅訪問があり、子どもが生活していく上で危ない箇所がないか確認されます。職員さんに聞いたところ、窓から転落の危険はないか、危ないものが子どもの手の届く範囲にないかなどを確認するそうです。危ない箇所があれば改善すれば良いので、自宅の危険箇所が理由で里親になれなかった人はいないそうです。
そして自宅訪問時には面談がありました。面談の内容は来られる職員の方によっても多少違うかもしれませんが、夫婦がそれぞれ小さい頃どういう家庭で育ったか、夫婦のお互いの印象、年収、犯罪歴がないかなどを聞かれました。緊迫した面接ではなく、雑談も交えながら明るい雰囲気での面接でした。
里親になるまでの流れ
里親登録までの詳細ステップ
- 相談 お住まいの地域を担当する児童相談所に気軽にご相談ください。地域によっては、児童相談所以外でも「里親支援機関」といった相談できる場所があります。制度として知られていないことが多くありますし、相談することで解決することもあります。
福岡市ではえがお館へ。☎︎092-832-7108 - ガイダンス面接 あなたの状況を伺いながら、里親制度の詳細やその後の手続き等について、詳しく説明されます。
- 基礎研修 (2日間)
資料やDVDを見ながら基礎的な里親の知識を学びます。 - 認定前研修(2日間)
里親について理解したのちに、子どもの権利、子どもの発達や心理、小児医学、社会的養護や児童虐待など子どもについて学びます

基礎研修、認定前研修は夫婦で参加しなければなりません。研修が平日に行われるため、どうしても平日にご主人の休みが取れず、里親登録を断念されるご夫婦がおられました。夫婦で話し合って平日の研修日に休みが取れるかも確認しておかなければいけませんね。
⒌申請書及び必要書類の提出
健康診断書などの提出
⒍養育実習(2日間)
福岡市内の児童養護施設や乳児院で実習研修を行う。

私は「福岡子供の家みずほ乳児院」に実習に行きました。当時コロナ禍で、乳児院スタッフ以外の立ち入りが規制されてしまい、養育実習の日程がなかなか組めませんでした。
乳児院の実習ではスタッフさんと同じように子どもたちと遊んだり、子どものミルクやオムツ替え、食事の補助などをしました。私の周りにわいわい集まってくる子どもたちがとても可愛かったです。
⒎家庭訪問
- 住環境チェック(子どもの部屋の確保、安全性など)
- 家族全員との面談(配偶者、実子、同居家族の理解と協力体制)
- 経済状況の確認(収入証明、経済的安定性)
- 近隣環境調査(学校・病院へのアクセス、地域コミュニティなど
⒏所長面接
家庭訪問時に面接があります。

自宅訪問があり、子どもが生活していく上で危ない箇所がないか確認されます。職員さんに聞いたところ、窓から転落の危険はないか、危ないものが子どもの手の届く範囲にないかなどを確認するそうです。危ない箇所があれば改善して貰えば良いので、自宅が理由で里親になれなかった人はいないそうです。
そして自宅訪問時に所長面接の日程を合わせていただきました。面接の内容は、その時に来られる職員の方によっても多少違うかもしれませんが、夫婦がそれぞれ小さい頃どういう家庭で育ったか、どんな両親だったか、夫婦のお互いの性格や印象、年収、犯罪歴がないかなどを聞かれました。雑談も交えながら明るい雰囲気での面接でした。
⒐子ども・子育て審議会専門部会による審議
⒑福岡市にて里親登録

面接の後の審議、里親登録まではひたすら待つのみです。里親登録までは、約半年から1年かかります。
里親登録されると福岡市から里親登録通知書と、研修を修了したことを証明する修了証書、里親登録された皆様への書類が自宅へ届き、晴れて里親となります。
3. 里親への支援
経済的支援
- 養育里親手当:子ども1人あたり月額90,000円
- 専門里親手当:子ども1人あたり月額141,000円
- 一般生活費:乳児・乳児以外 約5〜6万円/月
- その他、教科書代、通学費、医療費などの実費も支給
サポート体制
- 児童相談所によるサポート
- 里親会等の支援団体
- レスパイトケアの利用(年間7日まで)
- 更新研修や里親同士の交流会
- 就学手続きの支援
- 医療機関との連携方法
- 発達支援サービスの利用
4. 養子縁組と養育里親の違い
養子縁組は法的な親子関係を成立させる制度であるのに対し、里親制度は法的な親子関係は生じない一時的な養育制度です。里親制度では、子どもが実親のもとに戻る可能性もあります。
両制度とも子どもの福祉を第一に考えた制度であり、子どもにとって最善の環境を提供することを目的としています。
まとめ
養子縁組と養育里親、どちらも子どもたちに家庭での養育環境を提供する重要な制度です。特別な資格は必要ありませんが、子どもの福祉を最優先に考え、適切な養育ができる環境が求められます。
もし興味をお持ちでしたら、お住まいの地域の児童相談所に連絡し、詳しい情報を得ることをお勧めします。子どもたちの健やかな成長のために、あなたの温かい手助けが必要とされています。
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