最近、育児に疲れ果てた母親による痛ましい事件のニュースを目にすることがあります。そのたびに、もし適切な支援があったら、誰かに相談できていたら、小さな命が救えたのではないかと胸が痛みます。
育児は決して一人でするものではありません。特に産後うつや育児疲れは、真面目で責任感の強いお母さんほど陥りやすく、「助けて」と声を上げることができずに孤立してしまいがちです。
福岡市には、そんな時に利用できる「ショートステイ里親制度」があります。
数日間だけ子どもを預かってもらえるこの制度は、お母さんの心と体を休ませ、親子関係を健全に保つための大切な支援です。完璧な母親である必要はありません。時には立ち止まり、深呼吸する時間も必要なのです。
育児の孤立が招く深刻な現実
現代の育児環境の厳しさ
核家族化が進み、近所付き合いも希薄になった現代では、多くの母親が孤立した環境で育児を行っています。特にコロナ禍以降、子育て支援センターの利用制限や外出自粛により、この傾向はさらに深刻化しています。
産後うつの実態
産後うつは決して珍しいことではありません。ホルモンバランスの変化、睡眠不足、育児への不安などが重なり、10人に1人の母親が経験するとされています。しかし、「母親なのに子どもを愛せない自分はダメな親だ」「母親なんだからちゃんとしなきゃ。」という罪悪感から、周囲に相談できずに一人で苦しんでいる方が多いのが現実です。
限界のサインを見逃さないで
- 子どもの泣き声にイライラが止まらない
- 子どもが可愛いと思えない
- 育児に喜びを感じられない
- 常に疲労感があり、何もする気になれない
- 食欲がない、または過食になる
- 眠れない、または寝すぎてしまう
これらは決して「甘え」ではありません。心と体からの重要なSOSサインです。サインに気づいたらまずは信頼できる誰かに相談して下さい。
ショートステイ里親制度という救いの手
制度の概要
福岡市のショートステイ里親制度は、保護者が一時的に子どもの養育が困難になった際に、最長7日間まで家庭的な環境で里親が子どもを預かる制度です。利用理由に制限はありません。
こんな時に利用できます
- 産後の体調回復が必要な時
- 精神的に疲れて育児が辛い時
- 医療機関での治療やカウンセリングを受ける時
- 単純に休息が必要だと感じた時
利用者の声
「産後3ヶ月、育児がつらくて泣いてばかりいました。ショートステイを3日間利用し、久しぶりにゆっくり眠ることができました。迎えに行った時、子どもの笑顔を見て『やっぱり可愛い』と思えた自分に安堵しました」（20代母親）
初めての双子育児に疲れていました。家事に育児にすることが山積みで毎日ヘトヘトでした。育児経験のある里親さんに子どもを預かっていただけると聞いて安心できました。是非また利用したいです。（30代母親）
利用への心理的ハードルを下げるために
「子どもを預けるのは可哀想」という誤解
子どもは環境の変化に順応する力を持っています。むしろ、疲弊したりイライラしている親と過ごすより、心に余裕のある大人と過ごす方が子どもにとっても良い場合があります。
福岡市の児童相談所では虐待予防の観点からも母親のリフレッシュを勧めています。
「母親失格」という思い込み
完璧な母親など存在しません。助けを求めることは、子どもと自分を守る賢明な判断です。一時的に子どもと距離を置くことで、より良い親子関係を築けることも多いのです。
経済的な心配
福岡市のショートステイ制度は所得に応じた料金設定で、シングル世帯、生活保護世帯は無料。一般世帯でも1日2,750円～5,350円程度です。病気など特別な理由があれば料金が減額される場合もあります。家族の心身の健康を守るための必要な投資と考えてください。
周囲のサポートの重要性
家族ができること
- 母親の変化に早めに気づく
- 「大丈夫？」ではなく「何か手伝えることある？」と具体的に声をかける
- できないことを責めない
- 制度の情報を一緒に調べる
- 利用することを後押しする
社会全体でできること
- 子育ては社会全体で支えるものという意識の共有
- 母親を孤立させない地域コミュニティづくり
- 支援制度の認知度向上
福岡市の相談窓口一覧
各区役所子育て支援課
東区役所
- 住所：〒812-8653 福岡市東区箱崎2丁目54-1
- 電話：092-645-1068
- 受付時間：平日8:30～17:15
博多区役所
- 住所：〒812-8512 福岡市博多区博多駅前2丁目9-3
- 電話：092-419-1080
- 受付時間：平日8:30～17:15
中央区役所
- 住所：〒810-8622 福岡市中央区大名2丁目5-31
- 電話：092-718-1101
- 受付時間：平日8:30～17:15
南区役所
- 住所：〒815-8501 福岡市南区塩原3丁目25-1
- 電話：092-559-5123
- 受付時間：平日8:30～17:15
城南区役所
- 住所：〒814-0192 福岡市城南区鳥飼6丁目1-1
- 電話：092-833-4103
- 受付時間：平日8:30～17:15
早良区役所
- 住所：〒814-8501 福岡市早良区百道2丁目1-1
- 電話：092-833-4354
- 受付時間：平日8:30～17:15
西区役所
- 住所：〒819-8501 福岡市西区内浜1丁目4-1
- 電話：092-895-7024
- 受付時間：平日8:30～17:15
ショートステイの流れ
①相談・問い合わせ
お住まいの区役所子育て支援課へ電話します。
あらかじめショートステイを利用したい希望日時をいくつか決めておくとスムーズです。
②子育て支援課の窓口にてショートステイに必要な書類に記入します。
- ショートステイ利用申請書
- ショートステイ受入票（子どもについてできるだけ詳しく書く）
所要時間は30分程度。
③日時確定
コーディネーターが里親を選出し、日時確定の連絡があります。当日何時ごろどこに集合するのかなどの連絡もこの時一緒にあります。
③ショートステイ当日までの準備
- ショートステイ利用について年齢に応じた説明をしておく
- 持ち物の準備
着替え（日数分＋予備）
パジャマ
下着（おむつ）
歯ブラシなどの日用品
常用薬（お薬手帳含む）
お気に入りのおもちゃ
普段使っている哺乳瓶やカップ（乳幼児の場合） - 子どもの爪を切っておく（ショートステイ中は爪切りができません）
- 子どもの体調の確認（子どもの体調不良によりショートステイが中断される可能性があります。）
④ショートステイ当日 - 自宅、里親宅、事務所、最寄駅など、決められた場所に集合
- 子どもの体温を測る。（37.5℃以上の場合はお預かりできません。）
- 荷物の確認
- 事前に受け入れ表に記入した内容と子どもの様子に変化などがあった場合は里親に伝える
- 質問や気になることの確認
まとめ
育児は人生で最も尊い仕事の一つですが、同時に心身ともに大きな負担を伴います。一人で全てを背負う必要はありません。
「助けて」という声は、決して弱さの表れではなく、子どもと自分の未来を守るための勇気ある行動です。福岡市のショートステイ里親制度は、そんなあなたを支える温かい手です。
もし今、育児に疲れ果てて「もう限界」と感じているなら、一度立ち止まって深呼吸してください。そして、勇気を出して相談の電話をかけてみてください。あなたは一人ではありません。
子どもの笑顔も、あなたの笑顔も、どちらも大切です。無理をせず、支援を受けながら、自分らしい子育てを見つけていきましょう。
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