「またパパに会いたい」パパの代わりを務める福岡市ショートステイ里親

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ショートステイ里親になりたい方向け

ショートステイ里親をやっていると、自分の親で満たせない愛情を里親に向けるお子さんもいます。特に父親、母親のどちらかがいないシングル家庭の場合、里親に「パパ、ママのように接してもらいたい」という気持ちが出てくることがあります。

子どもは本来、親からの愛情を受けて育ちます。しかし家庭でそれが得られない場合、「それでも誰かに甘えたい、誰かに愛されたい」となるわけです。そういう本能的な欲求が里親に向くのです。

今回はショートステイで来たお子さんが、里親を信頼し、甘えてくれたエピソードを紹介します。

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初めての「パパ」との出会い

お迎え

シングルマザーの母親を持つ3歳の女の子、Aちゃん。初めての2泊3日のショートステイ利用でした。

ショートステイスタッフと私で自宅にお迎えに行くと、ママが玄関を開けた瞬間、Aちゃんはスタッフの横をすり抜けて玄関から飛び出してきました。

「おっと!危ないよ」

スタッフの後ろにいた私がAちゃんの前に立ちはだかると、私の顔を見てニコッと笑い、そのまま私の手を握ってきました。警戒心がまったくない子だなと思いながら、私も手を握り返します。

Aちゃんは私の手を引いて、すでに階段を降りようとしています。出かけることが好きなのでしょう。ワクワクした気持ちが伝わってきます。欲求に素直で可愛らしいなと思いつつ、「ママとお話があるから待ってね」と声をかけ、スタッフと母親が荷物の確認や連絡事項の打ち合わせを終えるのを待ちました。

体調確認を済ませ、いよいよママとお別れです。

「バイバーイ!」と元気よく手を振るAちゃん。あっけない別れぶりに驚きながら、ママも「バイバイ…」と手を振りました。どちらかというと、Aちゃんよりもママの方が寂しそうでした。

道中での会話

「お預かりします」とママに挨拶し、車に乗り込みました。

外の景色を眺めながらAちゃんは、「あ、このうどん屋さん行った」「あ、このお店で買い物した」「あ、このお店美味しいよ」とおしゃべりが止まりません。「そうなんだ、すごいね」などと会話しながら、無事に家に到着しました。

1日目:ママを求めて

家に着いてからはしばらく二人で過ごしました。息子が学校から帰ってくると、仲良く遊んでいる姿にほっこりしながら夕食の準備をしました。

辺りが暗くなってきた頃、「ママは?」とAちゃんが尋ねました。

「今日はここにお泊まりだから、ママはいないんだよ。」と伝えると、Aちゃんは急に泣き出しました。今回はなぜAちゃんの母親がショートステイを利用するのか、その理由を聞いていなかったので、Aちゃんにはママと別々に過ごすということだけ伝えました。
母親からショートステイのことを十分に聞かされていなかったのか、母親が話したのにAちゃんに全容が伝わっていなかったのか真相はわかりませんが、Aちゃんの「ママがいいー!」が始まりました。

ショートステイでお預かり中、お子さんの「ママがいいー!」が始まったら、私はいつものように「そっか。ママがいいよね。ママがいたら安心するもんね。」とまずはママの良さを共有します。そしてお子さんと二人でママを肯定し、「私は仲間だよ」というアピールをします。そして「ママに会えなくて寂しいけど、今まで泣かずに頑張ったもんね」と、できたことを褒めます。ここでほとんどのお子さんは私がお子さんの気持ちを理解したことにさらに泣きますが、しばらくして泣くことが落ち着いたら私を信頼してくれるようになります。

「もうちょっと頑張れるかな?」と聞くと、Aちゃんはいまいち心が決まらない様子。息子も「大丈夫だよ。怖くないよ」と援護してくれて、ようやく納得しかけてきたところで、「お腹空いたから、ご飯にしようか!」と次の切り替え作戦を実行すると、「うん!」となんとか気持ちを切り替えてくれました。

パパへの憧れ

夕飯が終わり、夫が帰宅しました。

Aちゃんに夫を「パパだよ」と紹介すると、Aちゃんは「パパ!Aちゃんのパパはお仕事‥」と言いました。初めて見るパパに驚き、「これがパパか!でもこの人は私のパパじゃない」とがっかりしたように見えました。

母親が離婚について伝えていないのか、それとも「パパはお仕事に行っている」と説明しているのかは私にはわかりませんが、私は子どもの言っていることを否定しないよう心がけているので、Aちゃんの「パパはお仕事」の言葉に。「そうなんだ。Aちゃんのパパはお仕事中なんだね。」と答えました。

夕飯後、家族はまったりとしながらテレビタイム。食器を洗ってリビングに戻ると、なんと夫に膝枕をしてもらってくつろいでいるAちゃんの姿が。

驚く私を見て夫が、「俺が座ってたら、頭を乗せてきた。」と説明します。いつもそうやって甘えている親子のような二人の姿。夫の言葉に振り返り、Aちゃんが膝枕をしているのに気づいた息子が慌てて「僕のパパだよ」とヤキモチを焼くくらいでした。

ショートステイでお預かりするお子さんの中には、母親の愛情を求めて私に抱っこをせがんだり抱きついてきたりする子はよくいますが、初日で夫にこんなに甘える子は初めてだったので、家族みんな驚きでした。

2日目:パパとの一日

2日目は家族で公園へ出かけました。夫と手をつなぎ、ニコニコした表情で満足げなAちゃん。公園でも夫のことを「パパ」と呼びながら一緒に遊んでいました。

普段ママと二人きりの生活で、パパという存在に接する機会がなかったAちゃん。憧れのパパと遊べて楽しかったのでしょう。とても楽しそうで、まるで私と息子の姿は見えていないかのようでした。

3日目:やっぱりママが一番

3日目はお別れの日。朝食を済ませ、荷物をまとめ、夫の運転する車でAちゃんを自宅まで送って行きました。

やはり、Aちゃんが一番好きなのはママです。あんなにくっついていた夫にもあっけなくバイバイし、ルンルンした様子で自宅へ帰って行きました。

※個人情報保護について 
本記事で紹介するエピソードは、ショートステイ里親制度への理解促進を目的として、実体験に基づいて執筆しています。お預かりしたお子さんとそのご家族のプライバシーを厳重に保護するため、年齢、性別、利用期間、家庭状況、身体的特徴などの個人を特定できる情報は変更しております。また、複数のケースを組み合わせて再構成している場合もあります。個人や家庭が特定されることのないよう十分に配慮した上で、同じような状況にある方々の参考となることを願い、経験を共有させていただいています。

初めてのショートステイでパパとの時間を満喫したAちゃん。Aちゃんは夕方泣いたのが嘘のように、その後は我が家で楽しく過ごしていました。夫に甘える姿はまるで親子のよう。公園でもずっとパパと一緒に遊び、満喫していました。

初めてのショートステイからまだ間もない数日後、2度目のショートステイの依頼がありました。Aちゃんが母親に、「楽しかった。またパパのところに行きたい。」と言ってくれたのでした。

家族以外に信頼できる人、甘えられる人がいるのは子供にとって、とても良いことだと思っています。お預かりするお子さんの中には、普段家ではなかなか言えない家族の愚痴を我が家でたっぷり吐き出して帰るお子さんもいます。ショートステイ中の我が家が子どもにとっての安全基地として機能してくれたら嬉しいと思っています。

我が家が誰かの「心のよりどころ」に

ショートステイ里親を始めるまで、正直なところ「私たちにできるだろうか」という不安もありました。でも、子どもが心を開いて甘えてくれる瞬間、「また行きたい」と言ってもらえる瞬間に出会うと、自分たちの家庭も誰かの大切な支えになれるのだという実感が湧いてきます。

私たちは特別なことをしているわけではありません。普段の生活の中で、温かい食事を一緒に食べ、一緒に笑い、一緒に眠る。ただそれだけのことが、子どもにとっては貴重な体験になり、ほんの少しの心の栄養になっているのかもしれません。

一歩踏み出すあなたへ

「誰かの力になりたい」と思っている方、ショートステイ里親で一歩踏み出してみませんか?子どもにとって一時的な環境の変化でも、その活動が「心のよりどころ」になることがあります。完璧である必要はありません。ただ、子どもを大切に思う気持ちがあれば十分です。

あの子がまた「行きたい」と思ってくれる場所でありたい。そう思いながら、私たちも日々成長させてもらっています。

まとめ

「またパパに会いたい」——たった数日の滞在で生まれたこの言葉は、私たち夫婦にとって何よりも大切な宝物となりました。ショートステイ里親として子どもたちを迎え入れることは、特別なことではありません。ただ、いつもの家庭の温かさを分け合うだけ。ショートステイ里親は子どもにとって「一時的な家」ですが、心に残る大人との出会いになることがあります。家庭で満たされない愛情を少しでも満たしてあげられることは私たちにとって喜びです。

今回のショートステイでは、一時的でも安心できる「第二の家庭」があることの意味を深く考えさせられました。子育てに奮闘するお母さんたちにとっても、信頼して預けられる場所があることは大きな支えとなります。誰かの力になりたいと思っているあなた、まずは地域の里親支援センターに相談してみませんか?小さな一歩が、大きな変化を生み出します。

一人でも多くの方に、ショートステイ里親制度を知っていただき、小さな一歩を踏み出すきっかけになれば幸いです。

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