「娘が可愛く思えない」と言った母親との出会い|ショートステイ里親が見た親子の絆の複雑さ

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みんなに知って欲しい

ショートステイ里親として活動する中で、様々な家庭の事情に触れてきました。その中でも特に印象深かったのは、「自分の娘が可愛く思えない」と涙ながらに打ち明けてくれた一人の母親との出会いでした。

この言葉を聞いた時、私は驚きと同時に、その母親の勇気ある告白に胸を打たれました。多くの人が「母親なら子どもを愛して当然」と考える中で、自分の本当の気持ちを認めることは、どれほど辛く勇気のいることでしょうか。

今回は、その母親との関わりを通して見えてきた、親子関係の複雑さと、支援の大切さについてお話ししたいと思います。

生後5ヶ月の女の子Sちゃん。

自宅を訪問した時のママの印象

当日、スタッフさんと一緒にご自宅までお子さんをお預かりに伺いました。
ママの育児疲れでショートステイ期間最長6泊7日のお預かり。
インターホンを鳴らしても「どうぞー」奥から聞こえるだけで
玄関を開けるととすぐにちょこんと一人でお座りした女の子の姿。「5ヶ月なのにもう一人で座れるの?」と驚きましたが私とスタッフさんは思わず「可愛い!」と口からこぼれていました。
ママさんは私たちのそんな声も聞こえていないのか、まだ終わっていない荷物の準備を急いでしていました。
「先に準備ができている分の荷物を確認しますね。」スタッフさんが声をかけてもこちらに目線を向けることもなく「はい。」とだけ返事をし、部屋の奥へ。
洋服の種類や枚数などを記録しながら「Sちゃーん。一人でお座りできるの?上手だね。」と話しかけるとニコッと笑顔。スタッフさんとまたまた「可愛いー♡」と言った感じで楽しく準備をしていました。
ママからこちらへの質問や報告などの会話は一切なく、スタッフさんや私とも目を合わせず、避けているような感じでした。荷物のチェックが終わると、奥の部屋から出てこられなくなってしまったので、「ではお預かりしますね。」と言うと「はい。」と返事だけ聞こえ、ママさんSちゃんはお別れもせずご自宅を後にしました。

ママと離れた車内でもなくことはなく車の外を眺めたり、私に笑いかけてくれたり、「ほんと赤ちゃんて可愛いですよねー」なんて話しながらスタッフさんの運転する車で帰宅しました。

※個人情報保護について 
本記事で紹介するエピソードは、ショートステイ里親制度への理解促進を目的として、実体験に基づいて執筆しています。お預かりしたお子さんとそのご家族のプライバシーを厳重に保護するため、年齢、性別、利用期間、家庭状況、身体的特徴などの個人を特定できる情報は変更しております。また、複数のケースを組み合わせて再構成している場合もあります。個人や家庭が特定されることのないよう十分に配慮した上で、同じような状況にある方々の参考となることを願い、経験を共有させていただいています。

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「我が子が可愛いと思えない」母親

ショートステイ終了

1回目1週間のショートステイが終了し、再びスタッフさんが車で迎えにきてくれて私とSちゃんを乗せ、ママの元へ向かいました。
車の中で、スタッフさんが「Sちゃんのママ、Sちゃんのこと可愛いと思えないって相談されてたんだって。」
私「え?そうなんですか?」
スタッフさん「この前Sちゃんのお迎えに行った時、私たちSちゃんが可愛い可愛いって言っちゃったでしょ?ママが可愛いと思えないのを悩んでいるのに私たちが可愛いって言ってしまったらママが傷ついてしまうかなって思って。」
私「そうですね。なんで他の人が可愛いと言ってくれるうちの子が、私は可愛いって感じないのだろうってさらに悩んでしまう場合もありますよね。」
スタッフさん「ママの前で可愛いって言わないように気をつけよう。」
私「わかりました。」
そんな話をしてSちゃんのおうちに到着しました。
今回はママさんと同居しているSちゃんのお祖母様が対応されました。
祖母「ほら、Sちゃん帰ってきたよ!」奥のお部屋にいるママさんに声をかけます。奥の部屋からママさんの気配はしますが黙ったまま部屋からは出てきません。
祖母「もう‥すいません。」と申し訳なさそうに言いながらお祖母様がその後の対応をして下さいました。
荷物の返却、Sちゃんのステイ中の様子などをお伝えして、ショートステイは終了しました。

スタッフさんに聞かされていたように、本当に子どもが可愛いって思えないんだなぁと感じました。

「子どもが可愛いと思えない人」の特徴(一部の例)

1. 完璧主義で「理想の親像」と比べてしまう人

  • 「こうあるべき」という期待が強く、現実の育児が思い通りにいかないことで感情がついてこない。

  • 子どもの“できない”に対してイライラしたり、責める気持ちが湧きやすい。

2. 産後うつや心の不調を抱えている人

  • 心に余裕がない状態では、喜びや愛情を感じにくくなる。

  • 「可愛いと思えない自分はダメな親だ」とさらに自責しやすい。

  • 子どもに愛情を感じられない自分への罪悪感が、さらに娘さんとの距離を作ってしまう悪循環に陥っていました。

3. 自分が育てられた過去の家庭環境に傷がある人

  • 愛情を十分に受け取ってこなかった人ほど、我が子をどう愛せばよいか分からないことがあります。

  • 「親の役割」を無意識に拒絶してしまうことも。

4. パートナーや周囲からのサポートが少ない人

  • ワンオペ育児などで心身ともに限界に近づいていると、「可愛い」よりも「疲れた」「やめたい」が強くなる。

5. 子どもに自分の「努力や犠牲」が報われないと感じている人

  • 「こんなに頑張っているのに」という感情が積もると、愛情が表に出にくくなることがあります。

子どもが可愛くないと感じてしまう人に伝えたいこと

  • 「可愛いと思えない」=愛情がない、とは限りません。
     ただ心に余裕がないだけ、疲れすぎているだけ、ということも多いです。
  • 助けを求めていい。
     これは立派な「育児のSOS」であり、支援が必要なサインです。
  • 専門機関に相談するのは強さの証。
     保健師、子育て支援センター、臨床心理士などに話すことで、楽になれることがたくさんあります。ファミリーサポート、ショートステイ里親などの支援制度を利用する方法もあります。

まとめ

Sちゃんのママさんとの出会いを通して、改めて感じたのは、親子関係に「正解」はないということです。愛情の形は人それぞれ異なり、時には愛情を感じられない時期があっても、それは決して母親として失格ということではありません。

ショートステイ里親として活動する中で、私たちにできることは

受け入れること:親の気持ちを判断せず、そのまま受け入れる
見守ること:小さな変化も見逃さず、温かく見守る
信じること:親子の絆は時間をかけて育まれることを信じる

何らかの困難を抱えながら子育てしている家庭はたくさんあります。「完璧な親」「理想の家族」という幻想に縛られず、それぞれの家庭なりの愛情の形を見つけていけるよう、私たちも社会全体で支援していくことが大切だと思います。

Sちゃんのママがが「娘を可愛く思えない」とこぼした日から2年。今ではお話ができるようになっているであろうSちゃんとママ。子どもが可愛いと思えない時期を乗り越えて家族で幸せに暮らせていると嬉しいです。


※この記事は、「子どもが可愛いと思えない」と感じてしまう親御さんの気持ちを責めるものではありません。
今その気持ちを抱えている方がいたら、どうかご自身を責めず、お近くの保健センターや相談窓口に声をかけてみてくださいね。

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