DV被害から子どもを守る|福岡市ショートステイ里親制度の活用例

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体験談

「子どもを守りたい。でも、どうしたらいいのかわからない…」

パートナーからのDV(ドメスティックバイオレンス)に悩む多くの方が、このような気持ちを抱えています。特に小さなお子さんがいる場合、「自分のことは我慢できても、子どもまで巻き込んでしまうのではないか」という不安は計り知れません。

今回は、実際にDV被害に悩んでいたママが、福岡市のショートステイ里親制度を活用してお子さんを守った事例をご紹介します。

この制度は、緊急時や一時的に家庭での養育が困難になった際に、登録されている里親家庭が短期間お子さんを預かってくれる仕組みです。多くの方にはまだ知られていない制度ですが、実は子どもの安全を守る重要な選択肢の一つなのです。

この記事を読んでいただきたい方

  • 現在DV被害に悩んでいる方
  • 周りにそのような状況の方がいる方
  • 子どもを支える制度について知りたい方
  • ショートステイ里親制度に関心のある方

一人でも多くの方に、「子どもを守る選択肢がある」ということを知っていただければと思います。

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ショートステイ里親とは?

ショートステイ里親とは、保護者が病気や育児疲れなどの様々な理由で、一時的に子どもを養育できない場合に、短期間(原則7日以内)子どもを預かる福岡市の子育て支援サービスです。このサービスは、子育て短期支援事業として位置づけられています。児童養護施設とは違って家庭的な養育が期待されます。

実例紹介

【パートナーのからのDVに悩む母親】
離婚して1年。2歳の娘を持つ30代女性。
新しいパートナーと同棲生活を始めたところ、パートナーが次第に暴言を吐いたり、暴力的な行動が目立つようになってきて、その矛先が自分だけでなく娘にも向かうようになった。子どもを怒鳴りつけるパートナーに怯え泣く娘。その泣き声を聞いてイライラするパートナー。イライラを母親にぶつけるという悪循環に陥った家庭からのヘルプサインでした。
DV被害者の場合、一時保護所やDVシェルターなどを利用する選択肢もありますが、今回母親は、DVのことを隠してショートステイ里親を選んだのでした。初回はとりあえず1週間のショートステイ依頼でした。
一時保護所やDVシェルターを利用すれば、パートナーから娘を守れるが、母親はパートナーと離れることになってしまいます。ショートステイでは一時的ではありますが、娘とパートナーを引き離すことができ、そのうえ母親とパートナーは一緒にいられる。もしかしたら「少しの間、子どもがいなくなれば、パートナーもまた昔のように変わるかもしれない。」と一縷の望みもあったのかもしれません。

我が家にやってきた2歳の女の子はやや小柄。体にあざなどの傷はありませんでした。
話すことが苦手で、うまく気持ちを伝えられずに泣き出すことが多く、情緒不安定なところが見受けられました。
一人で服が脱ぎたいのにうまく出来ずに泣く。自分でご飯が食べたいのに、うまくスプーンが使えなくて泣くなどと、ちょっとした事で泣いていました。
夫に対する警戒心があり、男の人が近づいてくると体に緊張が走るようでした。
そんなときは、「この人は怖くない、大丈夫。」と子どもに思ってもらえるように努めます。大きな声、物音を出さない、いつも笑顔でいる、優しく話しかけたり毎日穏やかな気持ちになれるように過ごしました。

1週間のショートステイはあっという間にすぎ、最終日。
区役所の子育て支援課職員さんが「DVの疑いがあるので母親から話を聞きたい」ということで、ショートステイ里親のスタッフとお子さんを連れて区役所へ行くことになりました。
ショートステイの依頼があってから、普段の生活の様子や、DVについての詳しい聞き取りをしようと何度か母親に電話したそうですが、母親がいつも忙しいと電話を切ってしまい話ができなかったらしく、子どもの引き渡しを区役所にすることで母親と職員さんが話をする時間を作ろうとしていたようです。

待ち合わせ時間に遅れてやってきた母親は片目が充血していました。転んでできたような傷ではなく、殴られたのでは?と思ってしまうような傷です。
「目はどうされたんですか?大丈夫ですか?」スタッフが驚きながら声をかけると「大丈夫です。もう治りかけなんで。」と母親。どうやってケガしたのか聞いたのに、ケガした原因については答えず、ますます怪しいと思うのでした。
私の隣に座る娘ちゃんをサッと抱き上げ、自分の隣に座らせ母親も椅子に座りました。
私はお子さんのステイ中の様子、排便の回数、最後の食事の時間などをお伝えして、荷物をお渡しし、ショートステイ里親からの話は終了。子育て支援かの職員さんがこれからゆっくりDVについての話を聞き出そうとしたところで、母親がバッと立ち上がり娘ちゃんを抱いて帰ろうとします。職員さんが「お母さん、この後お話しできませんか?」と聞くと「この後病院なんですよ。」と言い、帰ろうとします。「お話ししたいのでお時間いただけるようお伝えしていたんですが‥。」と言い切る前に「予約してるんで。」と聞く耳を持ちません。「お母さん、どこか体調が悪いのですか?」ショートステイスタッフが尋ねると「産婦人科に行きたいんで。」とそのまま娘ちゃんを連れ部屋を出ていってしまいました。
話す時間を作ってもらえるよう約束をし、私も立ち会っていたのに出て行く母親に呆然。
慌ててスタッフさんが母親の後を追いかけ私も続きました。やっと追いついた時には駐車場でパートナーの車に乗り込んだ後でした。スタッフさんが車に近づいて声をかけようとしました。パートナーも我々に気づいていたはずなのに、車はそのまま行ってしまいました。
母親は私たちがパートナーさんにDVについての話をしたらまずいと思ったのでしょうか。パートナーのDVによって我が子が保護され合えなくなることが不安だったのでしょうか。詳しく話をしたいという職員さんの願いも叶わず、最初のショートステイは終了したのでした。

その後2回目、3回目とショートステイの回数が増えるたびに母親のパートナーへの気持ちがなくなっていったのか、パートナーに対する諦めか、職員さんとの信頼関係が構築されたのか、DVについても少しづつ職員さんに話すようになったそうです。私はショートステイの依頼があれば引き受け、お子さんが楽しく過ごせるように努め、お子さんに変わった様子があればその都度報告する生活でした。二人は離れたりくっついたりとなかなか離れられなかったようですが、最初のショートステイ利用から1年半。親子2人だけの生活を始め、やっと落ち着いたそうです。

※個人情報保護について
本記事で紹介するエピソードは、ショートステイ里親制度への理解促進を目的として、実体験に基づいて執筆しています。お預かりしたお子さんとそのご家族のプライバシーを厳重に保護するため、年齢、性別、利用期間、家庭状況、身体的特徴などの個人を特定できる情報は変更しております。また、複数のケースを組み合わせて再構成している場合もあります。個人や家庭が特定されることのないよう十分に配慮した上で、同じような状況にある方々の参考となることを願い、経験を共有させていただいています。

ショートステイを利用して

初めてのショートステイ利用申請時には、母親が隠していたパートナーからのDV被害。
早い段階でそれに気づきながらも母親の気持ち寄り添い、DVについて言及せず、母親がパートナーと離れる決心が着くまでサポートした子育て支援課の職員さんとショートステイスタッフさん。その行動がベストだと判断できる経験値と対応力には脱帽でした。

実際、DVシェルターに駆け込んだはずの女性が、いつの間にかこっそりDV加害者の元へ戻ってしまうのはよくある話なのだそうです。DV被害者と加害者は共依存関係にあることが多く、なかなか離れられないことが多いらしいです。もしもショートステイではなくDVシェルターを利用していたら、また違う結果になっていたかもしれません。

DV被害にあった方全員がショートステイの利用で解決できると思ってはいません。しかしこういった事例があることを知り、選択肢の一つにしてもらえると嬉しいです。

まとめ

DV被害に苦しむ母親にとって、ショートステイ里親制度は心の整理をする貴重な時間と、冷静に状況を見つめ直す機会を提供できたのではないでしょうか。お子さんを安全な場所に預けることで、母親は自分自身と向き合い、娘の未来を真剣に考えることができたのです。
何度かの利用を重ねる中で、母親は「このままではいけない」という決意を固め、勇気ある決断に至りました。そして今、母娘は平穏で幸せな新しい生活を歩んでいます。

ショートステイ里親として、このような家族の転機に関わることができたことを、深く意義深く感じています。制度の目的は一時的な預かりですが、その期間が親子にとって人生を変える大切な時間となる可能性もあるのです。

困難な状況にある家族にとって、ショートステイ里親制度が希望の光となり、新しい人生への第一歩を踏み出すきっかけになることを願っています。私たち里親は、ただお子さんを預かるだけでなく、家族全体の幸せを支える重要な役割を担っているのだと改めて実感しています。

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