「どんな1日を過ごすんだろう?」「子どもが泣いたらどうすれば…?」
ショートステイ里親に関心がある方なら、こんな不安を感じたことがあるかもしれません。今回は、私が実際に1人の子どもをお預かりしたときの1日と、泣いてしまった子どもとのやり取りについてお話しします。
4歳男の子Hくんの場合
10:00 お迎え・自己紹介
母親が出張で家を空けることになり、1泊2日のお預かりでした。
自宅へお迎えに行くことが多いのですが、事務所集合でした。
ショートステイ受け入れ前に母親がしっかりと「ママが仕事で家にいないとHくん1人になっちゃうから、おーちゃんちに行っててね。」と伝えてくださっていました。私の呼び名も前もってスタッフに聞いてくださっていて、「おーちゃんって人がHくんのお世話をしてくれるからね。Aくんってお兄ちゃんがいるから一緒に遊べるからね。」ときちんと息子さんにお話しされていました。
事務所で初めてお会いした時も「2回寝たらお迎えに来るからね」と息子さんに説明されていて、しっかりしたママだなぁという印象でした。
卵アレルギーがあるとお聞きしていたので、その他のアレルギーがないかママに確認をしました。するとその他のアレルギーはなく、「卵は加熱してあれば大丈夫です」とのこと。
前日一生懸命卵アレルギーのお子さん用の料理を検索してメニューを考えた時間はなんだったんだ!と心の中で叫びました。
生卵を使う子どもメニューはほとんどないのでほぼなんでも食べられると肩の荷が降りました。
私「じゃあ、ほとんどのメニューは食べられますね。」
スタッフ「よかったですね。卵使えなくなると作れる料理限られますよね。」
私「お菓子もパッケージ確認しないとって思ってたからよかったです。」
事前の情報と実際聞いてみた情報が違うことがたまにあるんですよね。
なので少しでも気になったり、疑問に思うことは聞いてみた方が良いです。
お預かり前には必ず荷物の確認をします。”あの持ち物がなくなった”などのトラブルがないようにです。
パジャマも着替えもお気に入りのおもちゃまできちんと忘れ物なく準備してありました。
お熱がないかチェックをしたら準備はバッチリ。
10:45 ママとのお別れ
うちに来るのを楽しみにしていたそうですが、車に乗り込んだところでママと離れてしまうことを実感したのかHくんが泣き出してしまいました。
でもこう言う時はママの姿が見えなくなった方がお子さんも切り替えができるので、私は「では、お預かりしますねー。」とそのまま助手席に向かいながらママさんににっこり微笑みました。
ママは「あっ、お願いします!」と言い、一瞬驚いた表情をしましたが「〇〇くんまたね〜ママお仕事頑張ってくるね!」とHくんに手を振りました。
ママはあっという間にお別れになって驚かれたんだと思います。
Hくんは車の窓に張り付いて、「ママ、ママー」と泣いていましたが夫に「出発していいよ」と伝え、車を出してもらいました。
ママが見えなくなってからもグスッ、グスッとうつむいて泣いているHくん。助手席から「お昼ご飯何食べたい?」と尋ねても「ママがいい〜」と言い、泣いたままでした。
「そうだよね。ママがいいよねー。」と返して(次はなんの話題で気をそらそうかなぁ‥)としばらく考えて振り返るともう泣きやんで、息子がいつも見ている仮面ライダーのDVDに夢中になっていました。
11:00 やっぱりママが良い
15分ほどでショッピングモールに到着し、昼食を食べようと車を降りたらまたママのことを思い出したようで「ママがいい〜」と泣き始めました。
私「ママはお仕事なんだよね。だから明日までおーちゃんちにいるんだよ。」
Hくん「イヤだー!ママがいい!ママと一緒にいる!」
息子「僕がいるから大丈夫だよ。おうちにはおもちゃもあるよ一緒に遊ぼうよ。
息子の優しい声かけに私も夫も感心しました。
Hくん「お友達やだ!ママがいいの!」
泣き声も大きくなってきて周りの目もだんだん気になってきます。
私「ここでご飯食べようよ。Hくんの好きな食べ物はなぁに?お子様ランチ?」
ママの話から話題を変えようと思っても、
Hくん「やだ!ご飯いらない!ママがいいの!」
周りの視線を痛いほど感じて、もう誘拐犯にでもなった気分です。笑
私「Hくん頑張ってねってママに言われなかった?Hくんもママに頑張るって言ってたよねぇ?もう頑張れなくなっちゃった?」
Hくん「もう頑張れない!ママと居たい!」
ママが良いの一点張り。
私「そっかぁ。ママと居たいよねぇ。でもママは今からお仕事って言ってなかった?おうちに帰ってもママはお仕事でいないからHくんひとりぼっちになっちゃうよ。1人はイヤだよねぇ?」
Hくん「ママに電話して!」
私「ママの電話番号知らないんだよね‥。」
Hくん「ママに電話すればいいじゃん。ママに電話してよ。」
Hくんはママに電話をすることが唯一の手段だと思ったのか、今度はママに電話して作戦。
私「電話ってね、番号がわからないとかけられないの。つながらないんだ。ママの電話番号知ってる?」
Hくん「‥‥。」
私「番号わからないんだ。じゃあ電話できないな。困ったなぁ」
実際はスタッフに連絡をすればママとは連絡取れるのですが、わざと知らないフリをしました。
私「ママはお仕事でいないし、ママの電話番号もわからないし、困ったなぁ。どうすればいいかなぁ」と独り言のようにつぶやきました。
Hくんも思いついた作戦が失敗に終わったと感じたのか勢いがなくなってきました。
私「明日にはお家に帰れるから、今日と明日だけ頑張ってみない?」
Hくん「ママがいいの!」
私「Hくんがママがいいのは知ってるんだよ。ママもHくんと一緒にいたいと思うし、でもお仕事なんだよね?」
Hくん「うん‥。」
私「ママがお仕事頑張れるようにおーちゃんちで待ってるんだよね?」
Hくん「でもママがいい!」
私「ママ、お仕事できなくなっちゃうけどいい?」
Hくん「それはいや!」
私「おーちゃんとこにいるのも嫌、ママが仕事できないのも嫌かぁ。じゃあどうしようかねぇ。」
Hくんはだんまり。彼が心の中で葛藤しているのがなんとなくわかりました。
私「ママに頑張るって言っちゃったしさ、明日まで頑張れない?」
Hくん「‥‥。」
うつむいていた顔がスッとこちらを向き、
Hくん「が、ん、ば、るっ!!」
自分に気合を入れるかのように大声で言いました。
私「頑張ってくれるの?ママはきっと喜ぶね!」
そういうとHくんはちょっと明るい顔で微笑みました。
私「よし!じゃあご飯何にする?」
Hくん「からあげクン。」
Hくんが泣き止んでホッとした家族に思わず笑いが出ました。
私「からあげクン好きなんだね。Aも好きだから、からあげクン買って海にでも遊びに行こうか。」
Hくん「海?行くー!」
息子「やったー!行こう行こう!」
車を降りて約30分もの長い戦いでした。
Hくん自身が自分で頑張ると決めたからか、その後は1回も泣きませんでした。
12:00 昼食
スーパーでお弁当やお惣菜、飲み物、コンビニで子ども達それぞれが好きなからあげクンを買って海へ。
砂浜にポップアップテントを立てて昼食。
その後浜辺で息子の砂遊びセットを使って一緒に砂遊びをしました。
協力して山やトンネルを作ると仲良くなれますよね。
トンネル内でわざと手をつかんだりして驚かせたり、笑いながら楽しく遊びました。
15:00 おやつ
海に行った後はコメダ珈琲に寄り道するのが我が家のお決まりコース。
海に行くと子どもがなかなか帰りたがらないので、コメダでスイーツを食べようと提案します。
息子はいつものクリームソーダ。Hくんはソフトクリームを食べました。大人はのんびりコーヒータイム。
コメダに来たのは初めてだったらしく笑顔でソフトクリームを食べてご機嫌なHくんでした。
16:00 帰宅
新しいお家に来た子はほとんどがどんな家なのかを見て回ります。
ですが、ほとんどの子が最初に開けるドアは玄関すぐの子供部屋です。子供部屋のおもちゃを見たらもうその部屋から動きません。子供は新しいおもちゃが大好きだからです。自分の家からおもちゃを持ってきていたHくんですが、息子のおもちゃで遊んで一度も自分のおもちゃで遊ぶことはありませんでした。
17:00 お風呂
我が家では乳児か幼児しか来たことないので、お風呂は入れてあげないといけません。「自分でできる」というお子さんもいますが、お風呂では転倒や溺死の危険があるので1人にさせないようにしています。
Hくんもお風呂に入れてあげ、パジャマはほとんど自分で着替えました。
18:30 夕食
お預かり中のメニューは、ハンバーグやカレー、オムライスなど子どもが好きそうなメニューにします。時間があるときは何が食べたいか確認してお子さんの好きなものを作ったりします。
この日は「ママ、お腹すいた。」というので早めに夕食開始。メニューはハンバーグでした。
美味しそうに頬張るHくん。
私「美味しい?」
Hくん「うん!」
私「よかった。明日ちょっと遊んでからママのところに帰るからね。」
Hくん「わかった!」
19:30 就寝準備
寝る前には必ず歯磨きをしてトイレ(おむつチェック)に行きます。
ご家庭によって寝るときの部屋の明るさが違うので部屋が真っ暗でもいいか確認します。
20:00 就寝
普段ママと寝ているお子さんだと、寝るときになってママがいない寂しさから泣いてしまうことが多く、私が一番気を遣う時間です。
できるだけ前向きな声かけをできるようにしています。
明日もまたお預かりの場合は明日の予定の中で楽しそうなことを選んで、「明日は動物園に行くからね。」などと伝え、「なんの動物が見たい?」と明日が楽しみになるように続けます。楽しくなってきたら「じゃあ明日のために寝よう!おやすみー」って感じです。
翌日お預かり終了の場合は、「明日帰れるからね。よく頑張ったね」などの声かけをします。家に帰れるとわかったらみんな笑顔になります。「さ、帰るときに寝坊しちゃったらいけないから早く寝よう!」というと子どもは慌てて寝ようとします。笑
Hくんはたくさん泣いていっぱい遊んで、お昼寝もしていなかったので布団に入って「砂遊び楽しかったねー」なんて話をしていたら、10分もしないうちに眠ってしまいました。
21:00 1日の振り返り
子どもが寝てしまったらスタッフに提出するレポートを書きます。お預かりしたお子さんがその日1日何時ごろ何をしたか、何を食べたか、どんな様子だったか、気になったことなどを記入します。
お預かりするお子さんが幼児で、子どもが寝てしまったら私はお仕事終了モードです。夜泣きがある場合はその都度対応します。
今のところ夜泣きがあった幼児さんはいません。
※この記事は筆者の実際の体験をもとに執筆していますが、プライバシー保護の観点から一部内容を変更しています。
この体験から感じたこと
ママと離れた寂しさで涙を流していたHくんでしたが、「ママの仕事のため」という理由を理解し、自分なりに気持ちを切り替えてくれました。ママが前もってショートステイを利用する理由を話していたおかげでHくんも気持ちを切り替えることができたと思います。Hくんは一度覚悟を決めると、その後は最後まで泣くことなく頑張り抜いてくれたのです。
この経験を通して、子どもが抱える不安や悲しみ、寂しさにまずは耳を傾け、その気持ちをしっかりと受け止めることの大切さを実感しました。「この人は自分の味方なんだ」と子どもに安心してもらえる関係性を築くことが何より重要だと感じています。
子どもたちは大人が思っている以上に強く、状況を理解する力を持っています。私たち里親にできることは、その気持ちに寄り添い、安心できる環境を作ることなのだと改めて学びました。
まとめ
ショートステイ里親として子どもを迎え入れる中で、突然泣き出してしまった時の対応は誰もが戸惑う瞬間です。今回の体験を通して学んだのは、子どもの涙には必ず理由があり、その気持ちに寄り添うことの大切さでした。
子どもの気持ちを受け止め、安心できる環境を作ることが何より重要だと実感しています。これからショートステイ里親を考えている方、または同じような場面で悩んでいる方の参考になれば幸いです。
一人ひとりの子どもに合わせた関わり方を見つけながら、共に成長していける里親でありたいと思います。
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