福岡市のショートステイ里親を利用する際にはお子さんになぜショートステイを利用するのか、いつ迎えにくるのかを説明する必要があります。子どもが安心して里親宅でショートステイするためです。
その中で時折出会うのが、「なぜ知らない人のお家にいるのか」を理解していない子どもたちです。保護者が子どもにショートステイのことを説明せず、ショートステイ当日を迎えてしまっているのです。
「ママはどこ?」「いつ帰れるの?」「なんで僕はここにいるの?」 そんな子どもたちの不安な気持ちに寄り添いながら、安心して過ごせる環境を作ることも、ショートステイ里親の大切な役割の一つです。
今回は、事前の説明なしにお預かりすることになったお子さんたちとの関わりを通じて感じたこと、そして保護者の方々に知っておいていただきたいことについてお話しします。緊急時のお預かりでも、少しでも子どもの心の負担を軽減するためのヒントになれば幸いです。
ある日突然、知らないおうちに
ショートステイで子どもを預かる場合
- 里親が保護者の自宅へお子さんを迎えに行く
- 里親が幼稚園、保育園へお子さんを迎えに行く
- 里親、保護者がSOS子どもの村に集まり、里親がお子さんを自宅に連れて帰る
https://www.sosjapan.org/childrens-village-fukuoka - 保護者が里親の自宅付近へお子さんを連れて行く
(※トラブル防止のため、保護者に里親の自宅を知られることはありません)
以上の4パターンに分けられます。
- 里親が保護者の自宅へ迎えに行く場合
子どもはお出かけに行くのだと楽しみにして、嬉しそうに手を繋いで里親についてくることが多いです。
里親宅について、しばらくはおもちゃで遊んだり、好きなテレビ番組を見たりして楽しく過ごしていますが、暗くなってくると「あれ?家に帰らないの?」「ママは?」と不安になってきて、しまいには泣き出してしまいます。
そこで私は事前に保護者から説明されていなかったんだなぁと気づき、「〇〇ちゃんのママは少し疲れちゃったんだって。ここで2回ねんねして、ママが元気になったら帰るからね。」「パパはお仕事でおうちにいないからここで◯日までおーちゃんといてね。」などとショートステイ里親を利用することになった理由を説明します。
まだお子さんと信頼関係のできていない私が説明するのと、子どもからの信頼度100%の保護者が説明するのでは、お子さんの満足度には雲泥の差があると思っています。 - 里親が幼稚園、保育園へ迎えに行く
幼稚園や保育園が終わる時間にお子さんを迎えに行きます。
事前にスタッフが園へショートステイを利用されると言うこと、里親の名前などを連絡してくれていて、スタッフも同行します。保護者は来れない(来ない)ことが多く、説明されていないお子さんは、いきなり知らない人が迎えに来て、ママは迎えに来ない、先生も助けてくれないという絶望の中、里親宅に向かうことになります。まるで誘拐されたような気分になるのではないかと思います。
ここでもショートステイを利用する理由、何日後に迎えにくるかなどを説明しますが、「ママが良い」と泣くお子さんが多いです。 - 里親、保護者がSOS子どもの村に集まる
事務所に集合して里親宅に向かう場合は、見送る保護者の姿を見ているので「捨てられた」「何か悪いことをしてしまったのかも」という気持ちになる子が多いです。子どもにとって「捨てられた」と感じるのは一番辛い経験なのではないでしょうか。
「大丈夫だよ。◯日に帰るからね。また必ず会えるからね。」と子どもの傷ついた気持ちを癒してあげながら会話します。 - 保護者が里親の自宅付近へ連れて行く
こちらも「里親宅に遊びに行く」、「ママは後から迎えに来る」と思っているお子さんが多いです。
里親宅について、しばらくはおもちゃで遊んだりして楽しく過ごしていますが、暗くなってくると「あれ?家に帰らないの?」「ママは?」と不安になってきてたいてい泣き出してしまいます。里親宅に連れてきたのは保護者なので「騙された」と受け取ってしまう子もいます。
「知らなかったんだね。ごめんね。びっくりしたよね。」とまずは子どもの気持ちに寄り添う声かけをします。それから事情を説明します。一度抱いた不信感は何かあるたびに顔を出してしまうのではないでしょうか。
事前説明のないショートステイの現場
子どもが理解してないと起こる典型的な行動、反応
- 不安で泣き続ける
保護者と離れてしまった悲しみで、シクシク泣くような鳴き方ではありません。悲しみ、怒り、絶望などさまざまな感情が入り混じって子どもが混乱しているのがわかります。 - 心を閉ざす、無表情になる
こちらが何を話しても聞き入れたくない、感じたくないとシャットダウンしてしまいます。里親はそれでも根気強く話しかけ、いろんな角度から説明し、理解してもらうしかありません。 - 怒りや混乱で荒れる
駄々っ子のように手足をバタバタさせながら叫ぶ子もいます。保護者と離れるという最悪の状況をどうにかして脱したいと思っているはずです。泣き叫んでいるから「家に帰ろうね」となるはずもなく、子どもの心に湧き上がる、不安、怒り、悲しみに共感して納得してもらうしかありません。
里親家庭としての戸惑いと対応の厳しさ
ショートステイを利用する前に子どもに説明をしておくように伝えられているはずです。
それではなぜ子どもに説明をしていないのか。
考えられるのは
- 説明するのが面倒
- 説明しても理解できないだろう
- 説明して泣かれたら困る
- 説明するのを忘れていた
- 説明できないほど体調(精神面、肉体面)が悪い
などの理由でしょう。
それでも事前に子どもに伝えるべきなのです。理由があって自分からできない場合は、スタッフや里親に頼んでおいても良いのです。お迎えの時に保護者の前でお子さんに説明することだってできます。以前、離婚の話し合いでのショートステイ里親を利用された方がいましたが、理由を伝えるとお子さんがショックを受ける可能性があると考えて、私の判断で子どもに理由を伝えるのは伏せていました。自分で説明できない、したくない場合は事前に相談してもらえればそういったことも可能なのです。
一度壊れてしまった子どもとの信頼関係はなかなか取り戻せません。傷ついてしまった子どもの心は何かあるたびにその日のことが思い出され、元には戻らないのです。
子どもが大好きで里親になったという人が多いです。子どもの幸せを一番に願っている里親は、子どもが傷ついているのを見るととても悲しく、やるせない気持ちになってしまいます。
ほんの一言で変わる子どもの気持ち
事前に説明を受けたお子さんもショートステイ中に寂しくなったりして泣いてしまう瞬間ももちろんあります。だけど保護者の説明があったからこそお子さんも「あと◯日でママに会える」「帰ったらママがぎゅーってしてくれるの」と気持ちを切り替えて頑張れるのです。
- ショートステイを利用する理由
本当のことを子どもに伝えたくない場合だってあると思います。そういう時も「こう伝えてあります。」と共有することで里親も適切に対応できます。 - ショートステイを利用する日数
「おーちゃんちで◯回寝るからね」「◯日に帰ってくるよ」などとお子さんが理解できる伝え方をしてください。 - 里親宅が安心、安全であること
事前の説明で「おーちゃんちにはお兄ちゃんがいるから一緒に遊んでくれるよ」という伝え方をしている保護者さんが多いです。この伝え方はとても良いと思っています。お子さんにとって、同じくらいの歳の子どもがいる、一緒に遊べるのは安心感があると思います。 - 帰ってきたら「〇〇しよう」という前向きな声かけ
「帰ってきたらぎゅーしよう」と言われ、それを楽しみにしているお子さんがいました。子どもはお金を使った特別なご褒美でなくても、「家に帰ったらママが抱きしめてくれるんだ」と頑張れるのです。 - 我が子が大好きだということ
「もしかしたら捨てられたのかな」という不安を抱かせないために、我が子が大好きで大切であると伝えておく必要があると思います。自分が大切な存在だとわかっていれば「必ず迎えにきてくれる」と信じられると思います。 - 必ず迎えに行くということ
必ず迎えに行くと伝えると安心できその日まで頑張ることができます。、毎日「あと何日?」と聞くお子さんもいます。寝る前に私から「あと◯日で帰れるね。」と声をかけることもあります。そう伝えた時に見せるホッとした顔に少し不安だったんだなと感じる時もあります。
これらを伝えてもらうことによって子どもの安心感は増え、里親の負担は減ります。
単に里親の負担を減らしたいのではありません。お子さんに事前に説明する一番の理由は、子どもの不安をなくす、親への不信感を抱かせないことにあります。
まとめ
子どもが安心してショートステイ里親を経験するには事前説明は欠かせません。保護者、里親、スタッフが協力できてこそ子どもは保護者と離れても安心して生活ができます。
子どもにとって、知らないこと、わからないこと、がどれだけ不安で怖いことか忘れないでください。
可能な限り子どもに「なぜ」「いつまで」「誰が迎えに来るのか」を伝えることで、子どもの不安は大きく軽減されます。たとえ完璧な説明ができなくても、「必ず迎えに行く」という約束の言葉だけでも、子どもにとっては大きな支えとなるのです。
私たち里親にとっても、お子さんの背景を知ることで、より適切なケアを提供することができます。「何も知らない」状態でお預かりするよりも、少しでも情報があることで、子どもの不安に早めに対応し、安心できる環境を整えることが可能になります。
子どもたちが「安心して過ごせた」と感じられるようなショートステイ里親でありたいと思っています。
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