福岡市のショートステイ里親になるためには、まず福岡市の養育里親になる必要があります。
養育里親になるには、
- 相談
- ガイダンス面接
- 基礎研修
- 認定前研修
- 申請書及び必要書類の提出
- 養育実習(2日間)
- 家庭訪問
- 所長面接
以上のステップがあります。
今回は⒍養育実習についてのお話です。
養育里親になるための詳しい手続きについてはこちらから⬇️
https://shortstay-satooya.com/how-to-become-foster-parent/
養育里親になるための研修の一環として、児童養護施設か、乳児院での実習がありました。私は乳児院を選択し、福岡子供の家みずほ乳児院へ研修に行きました。たった2日間でしたが、子どもたちと関わり、施設の役割や限界、家庭で育つことの大切さを肌で感じました。今回は、その研修体験を通して得た学びをお伝えします。
養育里親になるための研修とは?
全体の流れ(座学+実習)
ショートステイ里親になるためには、福岡市の養育里親にならないといけません。まず福岡市こども総合相談センターえがお館でのオリエンテーションから始まります。そこで里親制度の基本的な仕組みや、子どもを預かることの責任について詳しく説明を受けます。
その後、子どもの権利や心理的ケアに関する座学の講義が続きます。虐待を受けた子どもの心理状態、年齢に応じた接し方、緊急時の対応方法など、実際に子どもを預かる際に必要な知識を学びます。
なぜ乳児院や児童養護施設での実習があるの?
乳児院や児童養護施設での実習が里親になるために必要なのか。その理由は、「家庭外」での養育がどのように行われているかを知るためです。多くの里親希望者は、自分の子育て経験や一般的な子育て知識はあっても、施設での集団保育の現実を知らないことがほとんどです。
実習を通じて集団保育と家庭的ケアの違いを体験することで、里親が果たす役割の重要性をより深く理解できるようになります。また、様々な事情で家庭を離れざるを得ない子どもたちの現状を知ることで、里親としての使命感や責任感も芽生えてきます。
まず実習前に
- 福岡子供の家みずほ乳児院へ実習の申し込み。
みずほ乳児院へ電話をし、実習の申し込みをしました。その後、実習の前に福岡市東区の保健福祉センターで検便を行ない、異常がなければ実習可能とのことで腸内細菌検査をすることになりました。
⒉福岡市東区の保健福祉センターで腸内細菌検査を行いました。
当時は福岡市東区の保健福祉センターにて腸内細菌検査(検便)を実施していましたが、現在は行われておらず、民間の企業を利用する必要があるそうです。食中毒などの原因菌の有無を調べます。乳児院の子どもたちの健康を守るため、必要な検査です。
乳児院での2日間|実習の様子
1日目〜人見知りしない子どもたち
実習初日は、まず職員の方から施設の説明と注意点について詳しく説明を受けました。感染症対策、安全管理、子どもとの接し方など、多くのルールがあることに驚きました。
施設の中も案内してもらいました。敷地内には玄関、リビング、キッチン、お風呂、寝室、おもちゃのある子ども部屋がある普通の民家と同じような建物がありました。そこでは職員の方がお父さん代わり、お母さん代わりとなって、数人の子どもたちと一般家庭と同じように生活しているとのことでした。
養子縁組で里親の元へ行く子ども、施設で過ごした後に実の両親のもとへ戻る子ども、ずっと施設にいる子どもなど、様々な事情を抱えた子どもたちがいます。それでも少しでも一般家庭と同じ生活ができるよう工夫されていることに感心しました。
その後、実際に子どもたちのお世話が始まります。まずは幼児さんのお部屋へ入ると、「わぁ!」と子どもたちが集まってきました。私が職員さんと同じように床に座ると、右膝に一人、左膝に一人、真ん中に一人と3人が抱っこ状態。後ろから抱きついてくる子もいて、まさにモテモテ状態です。
職員さんによると、研修やボランティアなどで施設を訪れる人はみんな子どもたちが大好きで優しい人ばかりなので、子どもたちはそれを敏感に感じ取り、自然と甘えてくるのだそうです。私は子どもたちと施設のおもちゃで遊び、「遊んでいるだけでいいの?」と思うくらい楽しい時間を過ごしました。
昼食の時間が近づくと、「昼食の介助を手伝ってください」と言われ、子供達も一緒に別室へ移動しました。幼稚園や保育園のように、子どもたちが椅子に座って並んで食事をします。私も職員さんと同じようにエプロンと三角巾をつけ、子どもたちの横に座りました。
好きなものから勢いよく食べる子、自分でできるはずなのに職員さんに食べさせてほしくて待っている子、褒められたくて食べ終わったお皿を見せて報告してくる子。どの子もとても可愛らしかったです。
その中でも特に印象的だったのが、足に障がいを持つ女の子Kちゃんでした。愛嬌があってずっと笑顔だったのに、昼食の終わりころになると急にうつむいて悲しそうな表情に変わりました。「どうしたの?もうお腹いっぱい?」と話しかけると、職員さんが「構ってほしくてやってるだけなので、気にしなくていいですよ。」と私に言いました。
職員さんにとってはいつものことだったのかもしれませんが、その対応が少し冷たく感じられ、私はKちゃんがかわいそうに思えました。そこで「頑張って食べよう?」とKちゃんとの会話を続けました。「みんな片付けてるから急いで〜」と笑いながら伝えると、Kちゃんも笑顔になりました。Kちゃんは介助なしでも自分でご飯を食べられると聞いていましたが、甘えたいのだろうと思い、私が食べさせてあげることで、なんとか時間内に食べ切ることができました。
職員さんが冷たく感じられた背景には、何より常に時間と効率が求められる現場だという事情がありました。一人の職員が複数の子どもを同時にケアしなければならず、一人ひとりにゆっくり向き合う時間がどうしても限られてしまいます。時間に追われる中で、食べない子はそのままで次の作業に移らざるを得ないのが現実でした。私は何時までに何をしないといけないという規制がなかったのでKちゃんに向き合うことができました。
昼食が終わると子どもたちはお昼寝。
私は乳児さんの寝かしつけに向かいました。幼児さんの部屋に私が行くと、昼寝をするはずの子どもたちが遊びたいモードになって落ち着いて寝られなくなってしまうからだと思います。
乳児さん部屋は産院の新生児室のようでした。ベビーベッドが並んでいて、職員さんがすでにミルクを飲ませた後のようで、まだ眠れずにいる赤ちゃんを抱いて寝かしつけました。私と職員さんが交代し、久しぶりに赤ちゃんを抱いて、「息子もこんな小さい時があったなぁ」と懐かしく感じました。
子どもたちが寝てしまったら休憩時間。別室で一人昼食を取りました。乳児院の近くには昼食ができそうな場所や、昼食を買えそうな場所がないので、お弁当を作るか先に飲み物食べ物を購入しておいてください。待機部屋はテーブルのみで冷蔵庫やレンジ、ポットなどもありません。
1日の終わりにレポートを書いて報告しないといけないので、休憩時間を利用してレポート内容をある程度まとめておくと良いと思います。
休憩の後は特にやることがなかったようで、「何かやることはありませんか?」と職員さんにお尋ねして、ビニール袋を一度広げて入れやすくしておく作業をしました。
作業が終わると休憩の時の部屋へ戻り、レポートを提出して1日目が終了しました。レポートは文字数などの制限はなく、真っ白なB5サイズの用紙にその日にやったこと、それぞれの感想などを記入しました。
2日目 〜変わらない笑顔で迎えてくれた子ども達
1回目の実習から2週間以上が経っていましたが、子どもたちは変わらない笑顔で迎えてくれました。数人の子どもたちは私のことを覚えてくれていたようで、とても嬉しく感じました。
前回は室内遊びだけでしたが、2日目はお外遊びもありました。小さい子たちはお外の見える部屋で、大きい子たちはお庭でと分かれて遊びます。楽しそうに遊ぶ子どもたちの声に癒されていると、職員さんがクリスマスの時期に寄付されたおもちゃの話をしてくださいました。おもちゃだけでなく、ランドセルなども寄付してくださる方がいらっしゃるそうです。いろんな方面から子ども達を支えてくださる方がいるのだと驚き、嬉しく感じました。
この日はボランティアの方も来られていて、初日の私のように右も左も子どもたちに囲まれていました。時間があるときにボランティアとして度々乳児院に来られているとのことで、色々とお話を聞きたかったのですが、私と入れ替わるように帰宅されてしまい、残念でした。
なお、その後コロナ禍でボランティアの方の立ち入りが制限されていましたが、現在は再開されていると思われますので、興味がある方は一度施設へお問い合わせされることをお勧めします。
前回と同様、朝の遊び時間が終わると子どもたちの昼食です。私は前回と同じように昼食の介助をしました。その後は子ども達のお昼寝と休憩時間があり、今回は初めて入浴の介助も体験しました。
職員さんが子どもたちをお風呂に入れる間、私は出てきた子どもたちの着替えを手伝います。タオルで体を拭いて、オムツを履かせ、着替えさせて、職員さんに引き渡すという流れです。まさに流れ作業のように、拭いては着替え、拭いては着替えの繰り返しでした。何人もの子どもを入浴させることは、体力も気力も必要な大変なお仕事だと実感しました。
入浴が終わると、最後にレポートを書いて実習終了です。1日目と同じく文字数などの制限はなく、真っ白なB5サイズの紙にその日行ったこと、それぞれの感想などを記入しました。
実習を通して感じた「家庭的な養育」の意味
乳児院での実習を通して、改めて「家庭的な養育」の本当の意味を考えさせられました。
乳児院では、職員の方々が本当に全力で子どもたちをケアしています。しかし、どうしても一人ひとりに割ける時間は限られてしまいます。一人の職員が多くの子どもを同時に見なければならない構造上、仕方のないことです。
一方で、家庭には「自分だけを見てくれる大人」がいます。子どもが泣いたときに、すぐに駆け寄ってくれる。甘えたいときに、時間を気にせずに抱っこしてくれる。そんな当たり前のことが、実は子どもの心の成長にとって計り知れないほど大切なのだと実感しました。
子どもが安心して甘えられる環境は、家庭ならではの役割です。施設ではなかなか叶わない、一対一の関係性の中で育まれる愛情の深さを、身をもって感じた2日間でした。
この経験を今にどう活かすか
乳児院での実習経験は、今の私のショートステイ里親としての活動に大きな影響を与えています。
まず、子ども一人ひとりの気持ちに丁寧に向き合いたいという思いが強まりました。ショートステイ中のたとえ数日間という短い期間であっても、その子にとって「安心できる場所だった」「また来たい場所だった」と感じてもらえるよう、全力で関わるようにしています。
また、実習で学んだ子どもたちの反応の早さと敏感さを常に意識しています。大人の表情や声のトーン、接し方の変化に、子どもたちは驚くほど敏感に反応します。実習がなければ見過ごしていたかもしれない、子どもの繊細なサインに気づけるようになったと感じています。
「この子は今、どんな気持ちなのか」「何を求めているのか」を常に考えながら、一つひとつの行動を丁寧に行うことを心がけています。
実習をやってみて
人を疑うことなく初対面の私にも抱っこを求め、甘えてくる子どもたち。子どもたちの純粋で可愛い笑顔に囲まれ、一緒に遊んでとても楽しい時間でした。
そんな呑気な私とは裏腹に、職員さんは時間と責任に追われ、やるべきことを淡々とこなしているところも見受けられました。複数の子どもを一度に見なければいけないので、一人一人の子どもたちと向き合う余裕がないのかもしれません。
実習は「家庭で育てること」の意味を深く考える貴重な機会になります。普段当たり前だと思っていることが、実は子どもにとってどれほど大切なことなのかを、実体験を通して学ぶことができます。
確かに実習は大変です。慣れない環境で、初めて会う子どもたちと関わることは、緊張や戸惑いの連続です。しかし、そこで得られる学びは計り知れないほど大きなものです。
何より、子どもたちは本当に小さな変化にも反応してくれます。あなたの温かい声かけや優しい表情が、その子の心に確実に届いています。だからこそ、あなたの関わりが子どもの人生に大きな影響を与える可能性があるのです。
その責任の重さを感じながらも、同時に里親としてできることの大きさを実感できるはずです
まとめ
乳児院での2日間の研修は、子どもたちの現実と正面から向き合う貴重な経験でした。施設の役割の大切さを理解すると同時に、家庭的な養育の価値を肌で感じられた2日間でした。
この経験があったからこそ、今の私は養育里親、ショートステイ里親として、子どもたちに「また来たい」「安心できる場所だった」と思ってもらえるような居場所を提供できるよう努めています。
子どもたちが必要としているのは、特別なことではありません。自分のことを大切に思ってくれる大人の存在と、安心して甘えられる環境です。たとえ短い期間であっても、その子の心に温かい記憶として残るような関わりを、これからも大切にしていきたいと思います。
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