ショートステイ里親を始めようと考えるとき、誰もが不安を感じるものです。私も最初は「どんな子が来るのだろう?」「自分にできるかな?」「家族と合わない場合はどうしよう?」と様々な心配がありました。
里親さんの体験談を聞いたり、スタッフに質問したりしても、私の不安は完全には消えませんでした。それは当然のことです。なぜなら、この経験には「1+1=2」のような明確な答えがないからです。
私たちが預かる子どもは、他の里親さんが預かった子どもと全く同じではありません。私の家族と他の里親家庭は全く異なります。家族構成、年齢、子どもとの関わり方も家庭ごとにそれぞれ違っています。
そのため、他の里親さんの体験は「私の時はこうでした」「こんな事例がありました」という参考情報にはなりますが、「あなたの場合はこうなります」と断言することはできないのです。
しかしこれから里親を始めたいと考えている方たちの不安を少しでも軽くするために、私の体験を交えながら、考えられるトラブルについてお話しします。
子どもに関するトラブル
初めてのお子さんを迎える不安
大人同士でも初めて人とお会いするときには、”どんな方だろう?”と不安になりますよね?ショートステイでお子さんと初めてお会いするときも同じです。
成長過程や育成歴の異なる子どもを迎えることは不安です。
新しい環境に慣れていない子どもたちは、感情的な反応を示すことがあり、そんな時の対応に自信を持てない人も多いです。このような時、サポートを受けられる体制や、共有できる情報が求められます。
ショートステイで預かるお子さんの情報は、ショートステイの依頼があるときに希望日時と一緒に知らされます。
・お子さんの年齢と性別
・性格
・アレルギーの有無
・好きな食べ物、嫌いな食べ物
・1日の生活リズム
・お預かりする期間
・前回のショートステイで何か問題があればその内容
以上を確認したうえでまずは引き受けるかどうかを判断します。
不安なことや気になる点もその時に確認して相談できます。

以前、お預かり予定のお子さん情報に”卵アレルギー”とあったので、卵を使わない食事メニューをあれこれ検索したりして考えていました。当日保護者さんにお会いしてお子さんの様子を聞いていると、「生卵がダメなだけで、加熱すれば大丈夫です」とのこと。(なんだぁ!ほとんど食べられるじゃん。)と肩の荷がスッと降りた気がしました。
オムツのサイズや体調など、事前に聞いていた情報と変わっている場合もあるので、気になる事は全て確認するようにしています。
家でトラブルがあった場合の不安
実際にショートステイを実施してみた際に生じたトラブルへの対応が十分にできるかどうかに対する不安も存在します。特に、育児経験がなかったり浅い場合、急な癇癪や予期せぬ発熱などがあると困難を感じるかもしれません。
これらの不安を解消するためには、事前の教育や知識習得、地域の支援団体や専門家との連携が役立ちます。特に、里親制度の運用について詳しく知ることが、安心感を高めるでしょう。

うちでは今のところ大きなトラブルはないですが、お友達の里親さん宅では、息子さんのおもちゃを預かったお子さんが壊してしまったことがあったそうです。
それを聞いて我が家では、ショートステイの予定が決まったら、息子に「大事なおもちゃは隠しておいてね」と伝えています。高価なものも子どもの手の届かないところに置くようにしていますが、もしも高価なものが壊れてしまうことなどがあれば、保険で補償してもらえるようです。
分離不安や環境の変化におけるストレス反応
ショートステイが決まってからは、保護者から子どもへ、理由があってよそのうちに泊まることを説明し、理解してもらいます。それでも保護者と離れてしまったこと、知らないお家に知らない人といるストレスでいつもと違う状態になってしまうお子さんもいます。

以前、母親と離されてしまったことに納得がいかず、手足をバタバタくねらせながら「ママがいい!」と泣き叫んだ4歳男の子がいました。
母親の出張のため、2泊3日のショートステイ利用でしたので、「今おうちに帰ったらママがお仕事できなくて困っちゃうんじゃないかな?」「さっきママと頑張るって約束してなかった?もう頑張れなくなっちゃった?」と真剣に向き合い、子どもが前向きになる言葉がけをしていきました。
話をし始めて30分が経った頃、泣き続けていたお子さんが急に大声で「がんばる!!」と言うと、それからは一切泣きませんでした。心の中でママに会いたい自分と、ママのために頑張りたい自分の決着がついたようでした。
初対面でわんわん泣かれて周りの人にもジロジロと見られ、私自身もどうしていいか分からず手探りでしたが、何とか自分で解決することでき、今までで一番困った事でしたが、里親として少しだけレベルアップできた気分でした。
夜泣きや睡眠の問題
お預かりするお子さんは、夜寝る前の時間になると昼間よりも不安を感じ、泣き出してしまう事があります。わたしたち里親家庭と自分の家との生活スタイルが違い、お子さんがなかなか寝付けないこともあります。こう言う時も事前にどう対処するか学んだり、自分はどうするか先に決めておくと安心できます。

昼間は遊んでいて、ママと離れた事も忘れて気が紛れていますが、暗くなってきて寝る前にふと寂しくなってママに会いたくて泣いてしまう事が多くあります。お子さんの希望があれば同じ布団で一緒に寝ることもあります。
普段、寝室の電気をつけたままで寝ていたり、家族が近くでテレビを見ている音を聞きながら寝ているお子さんもいます。真っ暗だったりしんとした寝室だとなかなか眠れずぐずったりすることもあります。
話ができるお子さんであれば「電気はつけておく?」「どのくらいの明るさがいい?」など確認することもあります。
持ってきた荷物の中に子どものパジャマや歯ブラシが入ってないこともよくあります。パジャマは息子が小さい時のものを着せて、子ども用歯ブラシは自分で購入しストックしています。
食事の好き嫌いや生活習慣の違い
好き嫌いも子供によって様々です。保護者の方が「これを食べさせてほしい」とおやつを持ってきていたり、「チョコやグミは食べさせないでほしい」などの要望があれば、要望にお応えすることもあります。
お子さんと話していると、我が家との生活習慣に違いがあり、朝ごはんを食べない、毎日お風呂に入らない、歯磨きをしない、パジャマに着替えないなどの家庭もあるようです。

お子さんをお預かりする際に荷物の確認をしますが、歯ブラシがないので保護者さんに確認すると、「実はまだ歯磨きした事ないんです。」とパパさん。子どもさんの前歯はもう生えているので『ではうちで歯ブラシやってみますね』とお預かり中に歯ブラシスタートしました。1日目はお子さんが嫌がりながらもサッと終わらせて何とかなりましたが、2日目は歯ブラシを見たとたん口を閉じて歯ブラシ拒否していました。歯ブラシのチクチク感が嫌だったようなので、ガーゼを指に巻いて磨いてみました。ガーゼで磨くのは抵抗なかったようで、すぐに歯磨き終了。ショートステイ終了時にガーゼで歯を磨くのがおすすめだとお伝えしました。子どもに合わせたやり方をいくつか知っておくのもおすすめです。
トイレトレーニングの段階やトイレ習慣の違い
トイトレの段階はお預かりの前に教えてもらえます。お子さんがオムツを使用している場合、お預かり当日にいつも使っているオムツを保護者に持ってきてもらえますが、持ってきてもらったオムツの枚数が少ない時があります。足りない場合は自分で購入します。

浴室に入ってすぐお子さんがおしっこし始めて慌てた事があります。入浴前にお子さんにトイレに行くか確認していたのですが、その子の家では浴室でおしっこをしても大丈夫だったようで、(トイレ行くの面倒だからお風呂ですればいっか。)くらいの気持ちだったようです。
生活習慣が違っていても、数日間のことですし、お子さんに無理強いすることはありませんが、「おーちゃんちではこうするんだよ」と説明して、うちのスタイルに合わせてもらう事もあります。子どもは適応能力が高く、馴染めなかったお子さんは今のところいません。
病気や怪我をしてしまった時
短期間のお預かりでも子どもが熱を出してしまったり、ケガをしてしまうこともあります。
発熱、嘔吐、下痢など体調不良時にはスタッフに連絡して、保護者の方に連絡し、お迎えに来てもらい、ショートステイは中断となります。ケガの場合はケガの状況より判断します。転んで小さな擦り傷くらいであればスタッフに報告し、ショートステイは継続します。

保育園にお迎えに行った際に先生から「今日〇〇ちゃん、転んでケガをしました」と報告を受けることもあります。その時もケガをした状況や、ケガの具合を細かく聞き、スタッフに報告します。ケガや病気以外でも爪を噛んでいる、食欲が無いなど、少しでもお子さんの異変を感じたらスタッフへ報告、相談するようにしています。
行動上の問題(癇癪や攻撃的行動)
お子さんに癇癪や攻撃的行動がある場合も保護者さんからスタッフへ、スタッフから里親へと伝えられます。ショートステイ先で以前にあったトラブルなども共有してもらえるので、家族で依頼を受けるか話し合って決める事ができます。

「家では嫌いな食べ物が食卓に並ぶと癇癪を起こして食べないんです。ひどい時はお皿をひっくり返してしまいます。」と言うママさん。私は(料理がめちゃくちゃにされてしまうかも‥)と覚悟してお預かりしたのですが、そのお子さん、うちでは癇癪を起こす事なくご飯を食べていました。母親には癇癪を起こして素の自分が出せるのに、里親宅では遠慮していつもよりお利口さんにしていたんでしょうね。前回のショートステイでこんなトラブルがあったと聞いていても、預かった時にまた同じトラブルが起こるとも限りません。
まとめ
ショートステイ里親として子どもを迎える際のトラブルは、適切な準備と対処法を知っていれば乗り越えられるものです。大切なのは
- 子どもの気持ちを第一に考える
- 無理をせず、スタッフに相談し、サポートを活用する
- 短期間でも愛情を持って接する
- 完璧を求めすぎない
福岡市のショートステイ里親に興味のある方は、まずSOS子どもの村が開催している「里親って?カフェ」に参加してみてください。実際の里親から体験談を聞くことで、不安が軽減され、具体的なイメージが持てるようになるでしょう。
あなたの支援を待っている人達がいます。
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