ドラマ「明日はもっと、いい日になる」子どもの本当の幸せとは

ドラマ「明日はもっと、いい日になる」
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月9ドラマ「明日はもっと、いい日になる」をご存知でしょうか?刑事として働いていた主人公が突然児童相談所への出向を命じられ、戸惑いながらも子どもたちと向き合っていく物語は、私たちショートステイ里親が日々感じている思いと重なる部分がたくさんあります。

8話でのエピソードでは、里親家庭でも実際に起こりうる問題を浮き彫りにしています。今回は、子どもが里親宅で「良い子を演じてしまう」現象と、それをどう乗り越えていくかについて考えていきたいと思います。

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第8話 涙の対処式、こどもたちに訪れる別れの時 あらすじ

※ここから先は、ドラマ「明日はもっと、いい日になる」のストーリーに触れています。ネタバレを避けたい方はご注意ください

一時保護所で子どもたちと過ごす主人公・夏井は、風雅くんと青葉くんの様子がいつもと違うことに気づく。この日は花蓮ちゃんと里親との面会日。楽しそうに里親の話をする花蓮ちゃんに対し、風雅くんはつまらなさそうな態度を取り、青葉くんが「自慢すんなよ」と言ったことで、3人の関係は険悪なムードに包まれてしまう。

里親支援センターとの面談で、花蓮ちゃんは里親さんと暮らしたいという意思を伝え、児童福祉士の蔵田に自分の退所式を開いてほしいとお願いする。花蓮ちゃんは「私は里親さんのところに行くから、お母さんに会ったら渡して」と夏井にブレスレットを託した。

一方、一時保護所では風雅くんと青葉くんが花蓮ちゃんに会いたくないと部屋に閉じこもっていた。課長兼保育士の南野は気が済むまで待とうと部屋の前で見守るが、どりむくんとりずむくんがママに会いたいと泣き出し、対応に追われることに。翌日も2人は部屋から出てこず、南野が「ご飯余っちゃったなぁ」と演技し、どりむくんとりずむくんが僕たちが食べると嘘をつき、2人の部屋へご飯を運んでいく優しい光景が見られた。

花蓮ちゃんは里親宅でのお泊まりに向かう。里親夫婦は張り切って豪華な食事を用意し、部屋を掃除。花蓮ちゃんの部屋には誕生日にみんなからもらったプレゼントが大切に飾られていた。可愛い服を着てこぼさないよう緊張しながらビーフシチューを食べる花蓮ちゃん。翌日の予定を聞かれると、遊園地でも動物園でもなく「公園に行きたい」と答える。一時保護所ではいつも好きなタイミングで行けないからという理由だった。夏井は花蓮ちゃんが里親宅でうまくやっていけるか不安を感じていることを蔵田に相談する。

児童相談所では職員たちが花蓮ちゃんの好きな「ひまわりの約束」を練習していた。その様子を見た風雅くんは、みんなが花蓮ちゃんの退所式の準備をしていることが気に入らない様子だった。

一方、プログラムにやってきたどりむくんとりずむくんの母親・夢乃は、金髪から黒髪に変わりスーツ姿で登場。就職が決まったと報告し、夏井と蔵田は安堵する。

ところが、花蓮ちゃんが予定より1日早く一時保護所に戻ってきてしまう。突然「帰りたい」と言い出した花蓮ちゃんの真意がわからず、里親夫婦は「私たちが何かしてしまったのかも」「子どもがいないから気持ちがわからない」と落胆し、里親登録をやめたいとまで言い出す。

蔵田は里親夫婦に里親の集まりで悩みを共有することを勧めるが、夫婦は登録をやめる決意を固めていた。このままでは花蓮ちゃんが見捨てられたと思ってしまうと危惧する蔵田に対し、夏井は「実の母親が迎えに来るまで一時保護所で過ごさせたい」と反論する。蔵田は、母親がいつ迎えに来るかわからない中で待ち続ける花蓮ちゃんが傷つくことを恐れ、子どものうちに家族と過ごす日常の大切さを説くが、夏井は花蓮ちゃんの気持ちを優先したいと譲らなかった。

蔵田は花蓮ちゃんに自分の過去を打ち明ける。小さい頃に母親を亡くし里親に引き取られたこと、初めは嫌だったが他に行く場所もなく諦めたこと。花蓮ちゃんも本音を語る。本当は母親と暮らしたいけれど、母親の病状が悪く一緒に暮らせない。里親と暮らすことで母親が安心し、回復につながればと考えていた。だから里親夫婦に好かれようと必死に努力した。しかし公園で拾ったおもちゃを盗んだと誤解され、花蓮ちゃんの話を聞かずに謝る里親夫婦の姿に「本当の親じゃないから話を聞いてくれなかった」と感じてしまった。蔵田は自分も同じ経験をしたと話し、里親から言われた「大事な人のためなら何度でも頭を下げてやる」という言葉を伝える。里親夫婦も花蓮ちゃんを大切に思っているのではないかと。

その会話を偶然聞いてしまった夏井は、南野に相談する。南野も里親経験があり、「大事な人のためなら何度だって頭を下げてやる」と笑いながら語った。「どうしたら上手に普通の家族になれるか」と尋ねる夏井に、南野は「普通が一番難しい。そんな難しいことを子どもたちが考えなくてもいいようになればいいね」と答えた。

翌日、夏井は里親夫婦を一時保護所に呼び、普段の花蓮ちゃんの姿を見てもらう。アイドルの真似をして遊ぶ姿、味噌汁をご飯にかけてかき込む姿。「あんな顔、うちではしなかった」と驚きながらも、夫婦は花蓮ちゃんをまた里親宅へ連れてきてほしいと頼んだ。

花蓮ちゃんが再び里親宅を訪れると、前回とは違い出しっぱなしの本や室内に干された洗濯物があった。「花蓮ちゃんが来るから片付けていただけで、いつもはこんな感じ」と里親夫婦。花蓮ちゃんと一緒に新しい部屋を作っていきたいと言う。花蓮ちゃんが自分の悪いところを次々に挙げて「それでもいいの?」と確認すると、「それがいいんだよ」「ママに会いたくなったらいつでも言ってね」と里親夫婦は温かく応える。夏井は「花蓮ちゃんが普通でいられるのが普通の家族」だと実感した。

後日、花蓮ちゃんの退所式が開かれる。職員たちがさまざまな出し物で盛り上げる中、花蓮ちゃんはみんなに手紙を読む。泣きながら一人一人に感謝を伝え、「ひまわりの約束」をみんなで歌う。花蓮ちゃんは歌を聞きながら一時保護所での思い出を振り返っていた。

いまだに部屋に閉じこもる風雅くんと青葉くんのもとへ、夏井が花蓮ちゃんからのメッセージを伝えに行く。花蓮ちゃんは2人がくれた誕生日プレゼントを大切にしていること、2人が幸せになるよう四つ葉のクローバーで作ったしおりを贈ったこと。それを聞いた2人は泣きながら花蓮ちゃんを見送りに駆けつける。花蓮ちゃんが好きだったのに素直に喜べなかったことを後悔し、本当は幸せになってほしいという気持ちを伝えてサヨナラした。

数日後、風雅くんと青葉くんには花蓮ちゃんから、りずむくんとどりむくんには母親から手紙が届く。それぞれが嬉しそうに手紙を読む姿が、新しい希望の始まりを感じさせた。

里親宅で「良い子」を演じてしまう子どもたち

子どもが抱える緊張と不安

里親宅に来た子どもたちの多くは、新しい環境に強い緊張を感じています。花蓮ちゃんも、実の母親の病状が悪く一緒に暮らせないため、「里親と暮らすことで母親が安心し、少しでも回復すれば」という思いから、里親夫婦に好かれようと必死に努力していました。

このように、多くの子どもたちは以下のような気持ちを抱えています。

  • 嫌われたくない、捨てられたくないという恐怖
  • 実の親に迷惑をかけたくないという責任感
  • 良い子でいなければ受け入れてもらえないという思い込み

そのため、里親宅では本来の自分を出せず、常に緊張した状態で「良い子」を演じてしまうのです。花蓮ちゃんも里親宅では見せなかった表情を、一時保護所では見せていました。アイドルの真似をして遊んだり、味噌汁をご飯にかけてかき込んだり。里親夫婦が「あんな顔、うちではしなかった」と驚いたように、子どもは無意識のうちに里親の前では本当の自分を隠してしまうことがあるのです。

ショートステイでは子ども達ができるだけ自分の家と変わらず過ごせるようにしています。お預かり前に聞き取りし、お気に入りのおもちゃやタオルケットを持ってきてもらうこともあります。あらかじめ情報を共有することで子どもも里親も安心して過ごせます。

「誤解」が生む心の傷

花蓮ちゃんのケースでは、公園で拾ったおもちゃを盗んだと誤解され、花蓮ちゃんの話を聞かずに謝る里親夫婦の姿を見て、「本当の親じゃないから話を聞いてくれなかった」と感じてしまいました。

子どもは小さなことでも敏感に察知します。里親が自分を信じてくれていないと感じた瞬間、心を閉ざしてしまうこともあります。こうした経験が積み重なると、子どもはますます「良い子でいなければ」というプレッシャーを感じ、ありのままの自分を出せなくなってしまうのです。

ショートステイ中まずは、子どもが普段通りの自分でいられる空間づくりをすること。そして子どもが気持ちを伝えてくれた時には子どもの話を否定せずに聴き、共感するように努めています。子どもに信頼してもらい、安心してもらうことが一番だと感じています。

一時保護所や養育施設の限界

集団生活による愛着形成の難しさ

一時保護所や児童養護施設は、子どもたちを一時的に保護し、安全を確保する大切な役割を果たしています。しかし、集団生活という環境には、子どもの心身の発達において限界があることも事実です。

  • 職員の数に限りがあるため、一人ひとりに1対1の十分な時間を割けない
  • 職員の交代制により、継続的な関係性を築きにくい
  • 集団生活のルールにより、個々のニーズに細かく対応できない
  • 特定の大人との愛着形成が難しい

風雅くんと青葉くんが花蓮ちゃんに会いたくないと部屋に閉じこもった時、課長兼保育士の南野は気が済むまで待とうとしましたが、どりむくんとりずむくんが泣き出したため対応に追われてしまいました。このように、施設では複数の子どもたちのケアを同時に行わなければならず、一人の子どもにじっくり寄り添う時間が限られてしまうのです。

「普通の日常」が送れない環境

花蓮ちゃんが里親夫婦から「明日はどこに行きたい?」と聞かれた時、遊園地でも動物園でもなく「公園に行きたい」と答えました。その理由は「一時保護所ではいつも好きなタイミングで行けないから」というものでした。

施設では集団行動が基本となるため、子どもが「今、公園に行きたい」と思っても、すぐに行くことはできません。食事の時間、入浴の時間、就寝時間など、すべてがスケジュール化されています。このような環境では、子どもが自分の思ったタイミングで気持ちを表現し、それに応えてもらうという体験を積み重ねることが難しくなります。

愛着形成における「特定の養育者」の重要性

人間の心の発達において、特に乳幼児期から学童期にかけての「愛着形成」は極めて重要です。愛着とは、特定の養育者との間に築かれる情緒的な絆のことで、この愛着が安定していると、子どもは以下のような能力を獲得できます。

  • 自己肯定感の形成
  • 他者への信頼感
  • 感情のコントロール能力
  • 社会性の発達

しかし、施設では職員が交代制で勤務するため、「いつもそばにいてくれる特定の人」という存在を得ることが難しいのが現状です。児童福祉士の蔵田が「子どものうちは里親でも家族と過ごすことがかけがえのない日常になる」と語ったように、安定した家庭環境で特定の大人と継続的な関係を築くことが、子どもの健全な心身の発達には不可欠なのです。

「普通の家族」を目指さなくていい

完璧を求めない勇気

ドラマの中で、夏井は南野に「どうしたら上手に普通の家族になれるか」と尋ねます。すると南野は「普通が一番難しい。そんな難しいことを子どもたちが考えなくてもいいようになればいいね」と答えました。

この言葉は、里親も子どもも「普通の家族」を演じようとすることの苦しさを表しています。里親夫婦が完璧な部屋を用意し、豪華な食事を準備したことは、愛情の表れであると同時に、「良い里親でなければ」というプレッシャーの表れでもありました。

ありのままを見せ合う関係性

花蓮ちゃんが二度目に里親宅を訪れた時、部屋には出しっぱなしの本や室内に干された洗濯物がありました。里親夫婦は「花蓮ちゃんが来るから片付けていただけで、いつもはこんな感じ」と正直に打ち明けます。そして、花蓮ちゃんと一緒に新しい部屋を作っていきたいと伝えました。

花蓮ちゃんが自分の悪いところを次々に挙げて「それでもいいの?」と確認すると、里親夫婦は「それがいいんだよ」と答えます。さらに「ママに会いたくなったらいつでも言ってね」と、花蓮ちゃんの実の母親への思いも受け止めてくれました。

この瞬間、花蓮ちゃんは初めて「ありのままの自分でいていい」と感じられたのではないでしょうか。

「頭を下げる」ことの意味

蔵田と南野は、それぞれ里親から「大事な人のためなら何度でも頭を下げてやる」という言葉を聞いていました。子どもの頃は、すぐに謝る大人を不思議に思っていた二人ですが、大人になってその言葉の意味を理解します。

完璧な親である必要はありません。時には誤解し、失敗することもあるでしょう。しかし、子どものために何度でも頭を下げ、向き合い続ける姿勢こそが、本当の愛情なのです。里親夫婦が公園での誤解の後も、花蓮ちゃんと向き合い続けたことが、最終的に花蓮ちゃんの心を開かせました。

安心できる居場所が子どもを育てる

「普通でいられる」ことの大切さ

夏井は最終的に「花蓮ちゃんが普通でいられるのが普通の家族」だと気づきます。これは里親家庭の本質を表す言葉です。

子どもにとって必要なのは、豪華な部屋や食事ではなく、ありのままの自分を受け入れてもらえる安心感です。味噌汁をご飯にかけても、部屋を散らかしても、機嫌が悪い日があっても、それでも変わらずに愛してくれる存在。それが家族なのです。

里親家庭だからこそできること

里親家庭には、施設にはない以下のような利点があります。

  • 少人数だからこそ、一人ひとりに丁寧に向き合える
  • 家庭的な環境で、日常生活のスキルを自然に学べる
  • 継続的な関係性により、安定した愛着を形成できる
  • 柔軟な対応で、子どもの個性やペースを尊重できる
  • 「普通の生活」を通じて、社会性や自立心を育める

花蓮ちゃんが「公園に行きたい」と言った時、里親夫婦はそれを叶えることができました。このような小さな日常の積み重ねが、子どもの心を育てていくのです。

時間をかけて築く信頼関係

花蓮ちゃんと里親夫婦の関係は、一度挫折しかけました。しかし、児童福祉士や保育士、そして里親夫婦自身が諦めずに向き合い続けたことで、花蓮ちゃんは再び里親宅へ行く決心をします。

里親と子どもの関係は、一朝一夕に築けるものではありません。試行錯誤を繰り返しながら、少しずつ信頼関係を築いていく過程そのものが、子どもの心を育てる貴重な体験になります。完璧な対応ができなくても、向き合い続ける姿勢があれば、子どもはそれを感じ取ってくれるのです。

まとめ

子どもが本当に必要としているのは、完璧な環境ではなく、ありのままの自分を受け入れてくれる温かい存在です。

一時保護所や養育施設は子どもたちの安全を守る大切な場所ですが、集団生活という環境では、愛着形成や個別のニーズへの対応に限界があります。里親家庭だからこそ、子どもは「普通でいられる」安心感を得て、健全な心身の発達を遂げることができるのです。

最初は緊張し、「良い子」を演じてしまう子どもも、時間をかけて信頼関係を築いていけば、必ず本当の自分を見せてくれるようになります。誤解や失敗があっても、「大事な人のためなら何度でも頭を下げる」という覚悟を持って向き合い続けることが、里親としての最も大切な姿勢なのではないでしょうか。

花蓮ちゃんが退所式でみんなに感謝の手紙を読んだように、子どもたちは自分を支えてくれた人々のことを決して忘れません。里親として子どもと過ごす日々は、子どもだけでなく、私たち大人にとっても、人生の意味を深く考えさせてくれる貴重な時間となるでしょう。

完璧じゃないけれど「それでもいいの?」と聞く子どもに、「それがいいんだよ」と答えられる関係性。それこそが、子どもが安心して育つことができる「本当の家族」の姿なのです。

ショートステイ里親について詳しく知りたい方は

  • お住まいの地域の児童相談所
  • 都道府県の里親支援機関
  • 全国里親会のホームページ

などでご確認いただけます。小さな一歩が、大きな変化の始まりになるかもしれません。

福岡市にお住まいの方→福岡市こども総合相談センター えがお舘 ☎︎092-832ー7100

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