月曜9時に放送されていたドラマ「明日はもっと、いい日になる」をご存知ですか?刑事だった主人公が、児童相談所に出向になり、試行錯誤しながら仕事に取り組む姿を描いたヒューマンドラマです。第10話は、児童虐待がテーマでした。
児童虐待の相談対応件数は年々増加しており、社会全体で子どもたちを守る取り組みが求められています。児童相談所や一時保護所だけでは対応しきれない現状の中で、「ショートステイ里親」という制度が注目されています。短期間でも、子どもたちに安心できる家庭環境を提供し、親のストレスや育児疲れを軽減し、虐待を未然に防ぐことができると考えられています。
第10話 蔵田の実父、夢乃の元夫、過去との決別 あらすじ
主人公の夏井と先輩の蔵田は虐待通報を受けて現場へ急行した。応答のない家で物置から子どもの助けを求める声を聞き、南京錠を壊して男児を救出する。帰宅した父親は「しつけの一環」と弁明したが、蔵田はいつになく感情的に「これは虐待です」と断じ、警察へ通報した。
この案件は管轄外だったため、蓮峰市の児相へ引き継ぐことになった。職員にの車に乗る男児を心配そうに見つめる蔵田。事務所へ戻ろうとした時、「総介」と蔵田を呼ぶ声が響いた。「久しぶり、覚えているか?父さんだよ」――それは蔵田の実父・総一郎だった。蔵田は立ちすくみ、手を震わせていた。
総一郎は半年前から里親の南野宛に手紙を送り、息子に会いたいと伝えていたが、南野は蔵田に渡していなかった。総一郎から仕事後に会おうと誘われるも、蔵田は逃げるように立ち去った。夏井に対し総一郎は「総介を立派に育ててくれた南野さんに感謝を伝えてほしい」と頼んだ。
一時保護所で南野を問い詰める蔵田。南野は半年分の手紙を差し出し謝罪した。手紙には息子への謝罪と、南野への感謝の言葉が綴られていた。
夏井から父の感謝の伝言を受けた南野は、蔵田が保護された当時のことを語る。全身あざだらけで保護された後も何度もパニックを起こしていた。蔵田は、今もフラッシュバックに苦しんでいるかもしれないと心配した。心配し元気のない夏井を自宅での食事に誘う。
南野の妻が豪華なカニ鍋を作って、夏井をもてなす。暖かく落ち着ける雰囲気に夏井は夫婦の愛を感じていた。
その夜、総一郎は蔵田の仕事が終わるのを待っていた。蔵田は信号待ちの瞬間、父の背中を押してしまいたいという殺意すら湧いた。居酒屋で総一郎は肝臓を壊したことをきっかけに人生を振り返り、謝罪したかったと頭を下げた。蔵田は妻を亡くし、仕事もうまくいかず借金が膨らんだという父の境遇を理解し、当初の怒りは薄れていった。
翌日、南野は総一郎と喫茶店で会い、蔵田が保護されてから家を出るまで書き続けた10冊の成長記録ノートを渡した。「あなたがしたことで総介がどれだけ苦しんだか記録されています。二度と彼を苦しめないでください」と告げた。
その後、総一郎が倒れたと蔵田に連絡が入る。病室を訪れた蔵田に、総一郎は「一緒に住んで親子の時間を取り戻したい」と提案したが、蔵田は困惑した。
一方、夢乃はどりむくんとの面会で、次はりずむくんとの面会がうまくいけば一時帰宅ができることを知る。不安はないかと聞かれた時に、元夫から復縁を迫られていたが、自由奔放な元夫がまた家を出たくたくなった時、子どもたちが父親を失うことを懸念し、きっぱり断ったことを伝えた。夢乃の勇気ある決断を聞いた蔵田は、自分も決着をつけようと総一郎の見送りに向かった。
フェリー乗り場で蔵田は総一郎に告げた。「あなたは何も変わっていなかった。自分が楽になりたいだけ。罪悪感から解放されたい、一人で死ぬのが怖い――全部自分のこと。当時も自分の気持ちを発散するために僕に甘えていた。やっぱり僕はあなたを許すことはできません」
児相に戻ると、夏井が待っていた。「あんな親から生まれたかと思うと嫌になる。それでも親子なんですよね」と複雑な思いを吐露する蔵田に、夏井は南野宅を訪れた時の温かさを語った。「血のつながりだけが親子じゃない。南野夫婦にたくさん愛されて育ってきたから、今の蔵田さんがいるんです」――その言葉に蔵田は「ありがとう」と涙を浮かべた。
その夜、蔵田は南野宅で成長記録ノートを返しながら、実父ときっぱり別れたことを報告した。幼い頃「たくさん迷惑をかけた」と照れる蔵田に、南野は「迷惑だなんて思ってない。お前が俺たちを親にしてくれた」と涙ながらに語った。蔵田の好物が並ぶ食卓は、笑顔に溢れていた。
翌日、蔵田は元恋人の心理士・蒔田を訪ねた。別れ際に蒔田の気持ちを聞かなかったことを謝罪し、何か言いかけては「出直すよ」と部屋を出た。自分の気持ちを考えようとしてくれた蔵田に、蒔田の顔はほころんでいた。
虐待が子どもの心に残すもの
虐待を受けた子どもたちは、保護された後も長い時間をかけて心の傷と向き合い続けます。体の傷は時間とともに癒えていきますが、心の傷はそう簡単には消えません。
ふとした瞬間に当時の恐怖がよみがえる「フラッシュバック」に苦しむ子どもたちも少なくありません。大きな音や特定の場面、誰かの怒鳴り声などがきっかけとなり、突然パニック状態に陥ってしまうこともあります。安全な環境に保護されても、心の中では過去の恐怖と戦い続けているのです。
「虐待の連鎖」を断ち切るために
虐待には「連鎖」という深刻な問題があります。虐待を受けた子どもは、暴力や不適切な関わり方を誤って学習してしまうことがあり、大人になった時に自分の子どもに対して同じような行動をとってしまうリスクがあるのです。
しかし、この連鎖は必ず起こるものではありません。適切なケアと温かい家庭環境の中で育つことで、子どもたちは「安心できる関係」「健全な親子のあり方」を学び直すことができます。愛情を持って接してくれる大人との出会いが、連鎖を断ち切る大きな力となるのです。
ショートステイ里親の役割
ショートステイ里親は、数日から数週間という短期間、家庭的な環境で子どもを預かる制度です。施設とは異なる家庭の温かさの中で、子どもたちは「普通の生活」を体験することができます。
蔵田の父親のように育児疲れやストレスなどで子どもを虐待してしまう前に短期間でも子どもを預けることでまた健全に子どもと向き合える力を蓄えることができ、虐待を未然に防ぐ可能性があります。
また虐待を受けてしまって傷ついた子どもには、里親と一緒に食事をする、里親が学校の話を聞く、安心して眠れる部屋がある――そんな当たり前のことが、傷を癒す場所となります。短期間であっても、信頼できる大人と過ごす時間は、子どもたちの心の回復を支える大切な一歩になります。
まとめ
虐待を受けた子どもたちの心の傷は、体の傷と違って一朝一夕には癒えません。しかし、温かい家庭環境と適切なサポートがあれば、子どもたちは少しずつ前に進むことができます。
養育里親として長期間子どもを養育するにはまだ自信が持てないという方でも、ショートステイ里親は、短期間だからこそ、無理なく子どもたちを支えることができます。あなたの家庭が、誰かの子どもにとって「安心できる場所」になるかもしれません。
子どもたちの未来のために、私たち一人ひとりができることがあります。ショートステイ里親という選択を、ぜひ考えてみてください。
ショートステイ里親について詳しく知りたい方は
- お住まいの地域の児童相談所
- 都道府県の里親支援機関
- 全国里親会のホームページ
などでご確認いただけます。小さな一歩が、大きな変化の始まりになるかもしれません。
福岡市にお住まいの方→福岡市こども総合相談センター えがお舘 ☎︎092-832ー7100
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