ドラマ「明日はもっと、いい日になる」児相と里親のリアルを重ねて

ドラマ「明日はもっと、いい日になる」
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今話題のドラマから考える「子どもたちの未来」

現在フジテレビで放送中のドラマ「明日はもっと、いい日になる」をご存知でしょうか。福原遥さんが月9ドラマ初主演を務めるこの作品は、児童相談所で働く職員たちの奮闘を描いたヒューマンドラマです。

刑事として働いていた主人公が突然児童相談所への出向を命じられ、戸惑いながらも子どもたちと向き合っていく物語は、私たちショートステイ里親が日々感じている思いと重なる部分がたくさんあります。

ドラマの中で描かれる「一人ひとりの子どもに寄り添うことの大切さ」「家族の形は様々であること」「すべての子どもが安心できる居場所を必要としていること」——これらのメッセージは、まさに私たちが里親活動を通して実感していることでもあります。

「こどもにとって、同じ日は二度とない。明日がこの子にとってもっといい日になりますように」 という番組のコンセプトは、ショートステイ里親として子どもたちを迎えるときの私たちの願いそのものです。

今回は、このドラマを通して改めて考える「子どもたちの居場所づくり」と「里親制度の意義」について、お話しさせていただきたいと思います。

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第1話 「刑事が児童相談所へ出向?」 あらすじ

※ここから先は、ドラマ「明日はもっと、いい日になる」のストーリーに触れています。ネタバレを避けたい方はご注意ください

刑事から児童相談所職員への転機

幼い頃から人を助けたいという強い思いを持ち、警察官の夢を叶えた主人公。しかし、犯人を尾行中に痴漢を発見し、女子高生を助けることを優先してしまったことが原因で追っていた犯人を取り逃し、児童相談所への出向を命じられることになる。

主人公は児童相談所といえば虐待などの深刻な問題だけを扱う場所というイメージを持っていたが、実際は24時間体制で様々な相談を受け付ける忙しい職場だった。職務内容の説明もそこそこに、先輩職員とともに現場へ向かうことになる。

現場での厳しい現実

現場に向かう途中、主人公は自動販売機の下に落ちているお金を拾おうとする幼い子どもを目撃する。その子は肌が黒く、服もボロボロで髪もボサボサの状態で、明らかにネグレクトが疑われる状況だった。

児童相談所の仕事は想像以上に過酷だった。訪問先では母親に塩を撒かれたり、家族に逃げられた男性に泣きつかれたり、ゴミ屋敷の片付けを手伝うなど、様々な困難に直面する。一息つく間もなく、子どもの泣き声があったという通報で再び現場へ向かうことになる。

通報のあった家では、母親が玄関での話し合いを希望し、家の中に入っての子どもとの面会を拒否していた。母親は「子どもが片付けをしなかったから叱っただけ」と主張するが、連れてきた子どもはおどおどした様子で、足にはあざがあった。

主人公は転んでできるような傷ではないと判断し、虐待について調査すべきだと主張する。しかし先輩職員の蔵田さんは「児相の仕事は親の罪を暴くことではない」と慎重な姿勢を示す。正義感の強い主人公は、そうした対応の遅さが最悪の事態を招くと先輩に詰め寄るが、「親子を引き離すことで子どもの親への愛はどうなるのか」と問い返され、反論できずに一人で事務所に戻ることになる。

たくとくんとの出会い

翌日、主人公が以前の事件を調査していると、虐待を疑っている母親と偶然出会う。母親は職場まで調べられたと勘違いし、児童相談所に「もう関わらないでほしい」と電話をかけてくる。児童相談所につながることで自分の育児を否定されたと感じ、プライドが傷つく母親もいることを主人公は学ぶ。

そんな中、事務所にいつもとは違う特別な音の電話が鳴る。それは児童相談所全国共通ダイヤル「#189」の通告だった。現場に駆けつけると、子どもは「母親に叩かれたので帰りたくない」と泣いていた。母親と連絡が取れず、たくとくんは施設で保護されることになる。一時保護所の保育士兼課長は「何も話さなくてもいいし、何でも話していいよ」と優しく声をかける。

母親の葛藤と主人公の成長

仕事が終わって事情を知った母親は「たくとを返して!」と興奮状態で児童相談所に駆けつける。主人公を見つけて「あなたが誘拐したんでしょ!」と詰め寄る母親。職員が子どもが帰りたくないと言ったので保護していることを説明するが、「叩いたのはたった1回」という母親に対し、「たった1回から常習化することもある」と伝えると、母親は呆れて実力行使で子どもを連れ戻そうとする。

別室で箱庭療法を受けているたくとくんは、カウンセラーから母親に会うかどうか聞かれ、会うことを決める。一方、主人公はこれ以上母親を興奮させないよう待機させられ、担当カウンセラーと話すことになる。
「虐待がなぜ起こったのか、刑事として原因を追求したい」という主人公に対し、心理士は「まるでお母さんが犯人みたいな扱い方だね」と指摘。「刑事さんからしたら被害者と加害者のように見えるかもしれないけど、ここは児相だよ。私たちが向き合っているのは事件じゃなくて家族なの。そこにいるのは親と子。ただそれだけ」という言葉に、主人公ははっとさせられる。

家族の真実

母親との面会でたくとくんは何も答えず、うつむいて絵を描いていた。何を言っても返事をしてくれない息子に、母親は「ママと一緒にいたいと言って!」と興奮し、職員に取り押さえられる。その姿を見たたくとくんは「僕はママと一緒にいたくない。さよならを言いにきただけ」と泣き出してしまう。

にこちゃんの秘密

翌日、施設にいたはずのたくとくんがいなくなり、職員総出で探すことになる。主人公が海岸沿いでたくとくんを発見するが、「帰りたくない!行きたいところがあるの」という彼の言葉を聞き、蔵田先輩に連絡せずにその場所に連れて行ってあげることにする。

浜辺で何かを探すたくとくんだったが、何を探しているのかは主人公にも教えてくれない。何も知らずたくとくんを探していた蔵田先輩に見つかり連絡しなかったことを責められ、一つの家族に入れ込みすぎないよう注意される。「僕たちが見なきゃいけないのは一人じゃない」と諭される主人公。

施設に戻されるたくとくんだったが翌朝、保育士兼課長が蔵田先輩とたくとくんを浜辺に連れて行くと、そこには夜通し砂浜を掘り返しながら何かを探し続ける主人公の姿があった。にこちゃんが何かもわからず、何を探せばよいかもわからないまま、ただひたすら探し続けていたのだった。

その姿を見たたくとくんは泣きながら「僕が悪いんだ。僕がにこちゃんを捨てたから、ママが入院しちゃったんだ」と語り始める。

家族の絆の回復

母親との再会の場で、たくとくんは自分の想いを語り始める。

〜回想シーン〜
にこちゃんマークを描いたパンケーキを作る動画を見て、たくとくんが疲れているママのためにパンケーキを作ろうとする。
ママが喜ぶと思って作りはじめたが、高いところにしまってあるお皿を取ろうとして転んでしまい、キッチンは粉まみれ、お皿も割れて大惨事に。母に部屋が散らかっているのを責められベランダに逃げ出して泣いているたくとくんの声に隣人が気づき、児相に通報されたのだった。
翌日学校から帰宅したたくとくんは、母親が隣人に謝罪している姿を目撃してしまう。自分のせいで母親が謝罪しているとことに負い目を感じたくとくんは、母親が作ってくれた大切な「にこちゃんのお守り」を海に投げ捨ててしまう。

暗くなって母親に見つけ出されたタクトくん。心配していた探し回っていた母親は、たくとくんの頬を叩き「どれだけ心配したと思っているの。なんで良い子にできないの!」と泣き崩れる。「もう泣いているママを見たくなかった。怒っているママを見たくなかった。僕がいなくなればママは…」そんな気持ちからたくとくんは「一緒にいたくない」と言ったのだった。

主人公は母親に「完璧なお母さんになろうとしていませんか?」と問いかける。朝5時に起き、数時間の睡眠でも美味しい料理を作り、自分は我慢してもたくとくんには新しい靴を買ってあげる。完璧な母親を目指すあまり、疲労とストレスで息子に当たってしまうようになっていた。

たくとくんは母親に「僕はママが頑張ってるの知ってるよ。でも僕はご飯なんて不味くていい、服だって汚くていい、全部いらないからもっとママと一緒にいたい。ママには笑っていてほしい」と伝える。主人公がたくとくんの手に描いたにこちゃんマークを見て母親が笑顔になり、二人は抱き合う。

新たな出発

蔵田先輩は母親に「周りに頼れる大人がいない環境で完璧な育児はできるはずがありません。これからはもっと遠慮なく我々を頼ってください。たくとくんを幸せにする未来ではなく、たくとくんと幸せになる未来を一緒に目指しましょう」と語りかけ、ひとり親家庭支援のパンフレットと手書きの資料を渡す。

僕らのゴールは保護することじゃなくて、あくまでも家庭に戻してあげることだから」という先輩の言葉通り、親子は家庭に戻ることができた。バスに乗り笑顔で手を振る親子を見送った後、楽しそうに会話をしながらピザを食べる様子、玄関に揃えられた2足の新しい靴。二人が幸せに暮らしている姿が映し出される。

しかし、物語はここで終わらない。児童相談所に新しい通報が入る。万引きをした男の子がいるという報告を受け、現場に向かうと、その子は主人公が以前目撃していた、自動販売機の下に落ちているお金を拾おうとしていた肌が黒く、服もボロボロで髪もボサボサの子どもだった。まだまだ支援を必要としている子どもたちがいることを示唆して、第1話は終了する。

ドラマが描く現実と私たちの体験

第1話では、刑事から児童相談所に出向となった主人公が、様々な家庭の問題と向き合う姿が描かれました。離婚後、子どものために必死に働きながら完璧な母親になろうとして疲弊し、ついに子どもに手を上げてしまった母親。一方、母親を愛しているからこそ「一緒にいたくない」と言ったたくとくん。その複雑な心情は、私たちが実際に接する家庭の状況とも重なる部分が多くありました。

ドラマの中で、カウンセラーが主人公に「私たちが向き合ってるのは事件じゃなくて家族なの。そこにいるのは親と子。ただそれだけ」と伝える場面があります。この言葉は、ショートステイ里親として子どもたちを迎え入れるときの私たちの心構えでもあります。子どもがどれだけいつも通りでいられるかに気をつけながら過ごすようにしています。

ドラマで保育士兼課長が子どもたちについて「毎日遊ぶことに一生懸命でくだらない事で笑って。でもその笑いの中に痛みがある」と語る場面が印象的でした。子どもたちは表面的には普通に過ごしているように見えても、心の奥には複雑な想いを抱えています。
お預かりするお子さんの中にも「私は捨てられたのかもしれない」「このまま家族がバラバラになってしまうかもしれない」と私に不安を訴えるお子さんもいます。

⬇️ショートステイ中お子さんが不安にならないようにできること⬇️

「一時的な関わり」の中にある大きな意味

ショートステイ里親制度は、保護者が病気や出張などで一時的に子どもの養育が困難になった場合に、短期間(原則7日以内)子どもを預かる制度です。「たった数日間で何ができるのか」と思われる方もいるかもしれませんが、この短い期間にこそ、子どもたちにとって大切な体験があります。

私たちショートステイ里親の役割は、そんな子どもたちが安心して過ごせる環境を提供することです。たくとくんが主人公の手に描いてもらったにこちゃんマークが最後に母親との和解の象徴となったように、短い滞在期間でも子どもたちの心に残る小さな温かい記憶を作ることができるのです。

実際に私たちの家に来る子どもたちの中にも、初日は緊張で固くなっていたのに、一緒に料理をしたり、お風呂に入ったりしながら少しずつ笑顔を見せてくれるようになる子がいます。短い時間でもパパ、ママと呼んでくれて「また来たい」と言ってくれる言葉は、私たちにとって何よりの励みになります。

完璧な支援者でなくても良い

ドラマの中で特に印象深かったのは、たくとくんの母親が「完璧なお母さん」になろうとして疲弊していく姿でした。朝5時に起き、毎日数時間の睡眠で、どんなに時間がなくても美味しい料理を作り、子どもには新しい靴を買っても自分の靴はボロボロになっても我慢する。そんな母親に対して、たくとくんは「ご飯なんて不味くていい、服だって汚くていい、全部いらないからもっとママと一緒にいたい。ママには笑っててほしい」と伝えます。

この場面は、私たちショートステイ里親にとっても重要なメッセージを含んでいます。子どもを預かるとき、私たちも「完璧な養育者」になろうとプレッシャーを感じることがあります。でも、子どもたちが本当に求めているのは、完璧な環境ではなく、安心して過ごせる温かい雰囲気の家庭なのです。

ドラマの先輩職員が母親に「周りに頼れる大人がいない環境で完璧な育児はできるはずがありません。もっと遠慮なく我々を頼ってください」と伝える場面がありました。これは私たち里親にも言えることで、一人ですべてを背負おうとせず、児童相談所や他の里親との連携を大切にすることが重要だと改めて感じました。

家族再生への希望

ドラマの最後で、主人公の先輩が重要なことを伝えます。「僕らのゴールは保護することじゃなくてあくまでも家庭に戻してあげることだから」。これは児童相談所の基本理念であり、私たちショートステイ里親の活動も同じ方向を向いています。

たくとくんと母親が最終的に理解し合い、抱き合うシーンは本当に感動的でした。バスに乗り笑顔で手を振る親子、楽しそうに会話をしながらピザを食べる様子、玄関に揃えられた二足の新しい靴——二人が幸せに暮らしている姿は、私たちが目指している理想的な結果でもあります。

ショートステイ里親として子どもを預かることは、家族の一時的な危機を支えることです。病気で入院する保護者、急な出張で家を空ける状況、様々な理由で一時的に養育が困難になった家庭を支援し、家族が再び一緒に生活できるようサポートすることが私たちの役割なのです。

たくとくんも母親もどちらも相手を思い遣ってした行動がすれ違ってしまい、一度離れることでお互いを見つめ直し、より素敵な家族になりました。
ショートステイでも保護者が子どもと離れ一時的に休息することでまた気持ち新たに子育てと向き合っていけるのだと思っています。

まとめ

ドラマ「明日はもっと、いい日になる」は、子どもたちと向き合う大人たちの姿を通して、私たちに大切なことを教えてくれます。完璧な答えがなくても、目の前の子どもに向き合うこと。一人ひとりの子どもの個性や想いを大切にすること。そして、社会全体で子どもたちの未来を支えていくこと。

私たちショートステイ里親の活動も、こうした想いの延長線上にあります。これからも、一人でも多くの子どもたちが「明日はもっと、いい日になる」と思えるような社会づくりに、微力ながら貢献していきたいと思います。

そして、もしこの記事を読んで少しでもショートステイ里親に興味を持っていただけた方がいらっしゃいましたら、お近くの児童相談所や里親支援機関にお気軽にお問い合わせください。皆さんのお力を必要としている子どもたちが、きっといます。


ショートステイ里親について詳しく知りたい方は

  • お住まいの地域の児童相談所
  • 都道府県の里親支援機関
  • 全国里親会のホームページ

などでご確認いただけます。小さな一歩が、大きな変化の始まりになるかもしれません。

福岡市にお住まいの方→福岡市こども総合相談センター えがお館 ☎︎092−833−3000

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