その一歩が、子どもの未来を守ります
「このままだと、危ないかもしれない」 「パートナーと子どもの関係が心配」 「自分も精神的に追い詰められている」
そんな不安を抱えながらも、「まだ大丈夫」「虐待というほどではない」と我慢していませんか?
実は、虐待が深刻化する前に利用できる支援制度があります。それがショートステイ里親です。今回は、福岡市東区で起きた痛ましい事件を受けて、虐待を未然に防ぐためのショートステイ里親制度についてお伝えします。
福岡市東区で起きた事件―防げたかもしれない悲劇
2025年、福岡市東区で６歳の女の子が母親のパートナーからライターでふくらはぎを炙り、全治２〜3週間のやけどを負わせるという痛ましい事件が発生しました。女の子が「パパからライターで焼かれた」と言ったことで事件が明るみになったようでした。パートナーは容疑を否認しているものの、傷害容疑で逮捕されました。
このような事件を目にするたび「もっと早く、誰かが手を差し伸べられなかったのか」と思います。
虐待は、ある日突然始まるものではありません。多くの場合、家庭内のストレス、経済的困難、パートナー間の不和、孤立した育児環境などが積み重なり、徐々にエスカレートしていきます。そして、保護者自身も「どうしたらいいかわからない」と追い詰められているケースが少なくありません。
だからこそ、虐待になる前に、SOSを出せる環境が必要なのです。
ショートステイ里親で虐待を防ぐ―子どもの「避難所」という役割
ショートステイ里親は、数日から数週間程度、子どもを一時的に預かる里親制度です。児童養護施設への入所とは異なり、家庭的な環境で子どもを見守ることができます。
ショートステイでできること
1. 子どもの安全確保 家庭内で緊張が高まっているとき、子どもを安全な場所に一時的に避難させることができます。パートナーと子どもの関係が悪化している場合、物理的な距離を取ることで最悪の事態を防げます。
2. 保護者の心のゆとりを取り戻す時間 育児疲れ、精神的ストレス、パートナーとの関係悪化など、保護者自身が追い詰められているとき、少しの休息が大きな意味を持ちます。冷静に今後のことを考える時間を持つことができます。
3. 第三者の目が入ることで状況改善のきっかけに ショートステイを利用することで、児童相談所や支援機関とつながるきっかけになります。家庭の状況を客観的に見つめ直し、必要な支援を受けることができます。
4. 「虐待」と認定される前に動ける 「まだ虐待とまでは言えないけれど、心配」という段階でも利用できます。深刻化する前に予防的に使える制度だからこそ、意味があるのです。
実際にショートステイを利用されたお母様のエピソード
ここで、実際にショートステイ里親を利用されたご家族のお話をご紹介します。
※個人情報保護について
本記事で紹介するエピソードは、ショートステイ里親制度への理解促進を目的として、実体験に基づいて執筆しています。お預かりしたお子さんとそのご家族のプライバシーを厳重に保護するため、年齢、性別、利用期間、家庭状況、身体的特徴などの個人を特定できる情報は変更しております。また、複数のケースを組み合わせて再構成している場合もあります。個人や家庭が特定されることのないよう十分に配慮した上で、同じような状況にある方々の参考となることを願い、経験を共有させていただいています。
Aさん親子のケース
Aさん(仮名)は、3歳のお子さんと暮らすシングルマザーでした。当時、同居していたパートナーが次第にお子さんに対して厳しく当たるようになり、些細なことで怒鳴りつけるようになっていました。
やがてAさん自身もパートナーから暴言や暴力を受けるようになり、「次は子どもに手が出るかもしれない」という恐怖を感じるようになったそうです。
悩んだ末、Aさんは児童相談所に相談し、ショートステイ里親の利用を決意されました。
「最初は『里親に預けるなんて、母親失格なのでは』と罪悪感がありました。でも、相談員の方に『お子さんを守るための勇気ある選択です』と言ってもらえて、救われました」
お子さんを里親宅に預けている間、Aさんは冷静に今後のことを考えることができました。そして何度かのショートステイ利用を経て、パートナーとの決別を決意。現在は、お子さんと2人で穏やかな生活を送られています。
「あのとき、ショートステイを利用していなければ、どうなっていたかわかりません。子どもを守れたこと、そして自分自身も守れたことに感謝しています」とAさんは話してくださいました。
「助けて」と言える勇気が、子どもを守る
虐待の多くは、密室で起こります。誰にも相談できず、孤立した環境で、保護者も子どもも追い詰められていきます。
でも、助けを求めることは恥ずかしいことではありません。むしろ、それは子どもを守るための、とても勇気ある行動です。
ショートステイ里親は、「もう限界」になる前に使える制度です。完璧な親でいる必要はありません。「今、少し休みたい」「子どもを安全な場所に置いてあげたい」そう思ったときが、利用するタイミングです。
ショートステイ里親制度の利用方法
ショートステイ里親の利用を希望される場合は、以下の窓口にご相談ください。
- お住まいの地域の児童相談所
- 市区町村の子育て支援課・福祉課
- 子ども家庭支援センター
相談は無料で、秘密は守られます。「こんなことで相談していいのかな」と迷う必要はありません。小さな不安でも、まずは声に出してみてください。
まとめ
私たち里親は、子どもたちの「安全基地」でありたいと願っています。
虐待が深刻化してからではなく、その手前で、子どもたちと保護者の皆さんを支えたい。そのためにショートステイ里親という制度があります。
もし今、あなたが「このままでは危ないかもしれない」と感じているなら、どうか一人で抱え込まないでください。子どもを守るため、そしてあなた自身を守るために、私たちを頼ってください。
小さなSOSが、大きな悲劇を防ぎます。
あなたとお子さんの笑顔を守るために、私たちはここにいます。
お問い合わせ・ご相談
- 福岡市こども総合相談センター(えがお館): 092-833-3000
- 児童相談所全国共通ダイヤル: 189(いちはやく)
