「何か社会貢献できることを始めたい」「子どもが好きで関わる機会があれば」「家族で取り組める意味のある活動はないかな」—そんな思いを抱いたことはありませんか?
福岡市で静かに広がりを見せている「ショートステイ里親」という活動をご存知でしょうか。短期間、支援を必要とする子どもたちを自宅で温かく迎え入れるこの取り組みは、新しい形の地域貢献です。
私自身、ショートステイ里親として活動する中で出会った笑顔や温もり、そして感じた充実感は何物にも代えがたいものでした。今日は、なぜ私が皆さんへショートステイ里親をおすすめしたいのか、その理由をお伝えします。子どもたちへの直接的な支援であると同時に、地域社会全体を豊かにするこの活動の魅力に、どうぞお付き合いください。
福岡市のショートステイ里親という制度
私は福岡市で養育里親として活動しています。
里親には、養子縁組里親と養育里親の2種類があります。
養子縁組は、お子さんを法的に自分の子どもとして迎え入れるタイプです。もう一つが私のような養育里親。戸籍を入れずに一定期間、子どもさんと自宅で生活し、子どもさんの成長をサポートする役割です。
そしてその養育里親が短期間になったものがショートステイ里親です。
ショートステイは数日から最大1週間、自宅でお子さんを預かります。
福岡市では養育里親の資格を持っていればショートステイ里親に登録できます。
お子さんを預かる際は、だいたい2週間ほど前に、登録先からショートステイ委託の連絡があります。
・お子さんの年齢と性別
・性格
・アレルギーの有無
・好きな食べ物、嫌いな食べ物
・1日の生活リズム
・お預かりする期間
・前回のショートステイで何か問題があればその内容
などが伝えられます。
これらの情報をもとに家族と話し合い、引き受けるかを決め、連絡します。
ショートステイ当日は保護者や里親の希望の場所(自宅、事務所、里親宅、最寄りの駅など)で保護者、スタッフと里親で直接お話しします。お子さんの情報などを聞き、着替えなどの荷物を受け取り、お子さんのお迎えをします。
お迎え後は終了時間まで自宅でお子さんと一緒に過ごします。
最終日もお迎えの時と同じく保護者、スタッフ、里親で会い、お子さんの家での様子、最終の食事時間、体調などを伝え荷物を返却。お子さんをお返しします。
ショートステイ里親をお勧めする理由
自分のペースでできる
福岡市のショートステイ里親の魅力の一つは、無理なく自分のペースで活動できること。月に何日、何回受け入れなければならない、という義務はありません。必ず事前に確認の連絡があります。仕事や家庭の予定を最優先にしながら、「今月は2回なら大丈夫」「来月は忙しいから受けられない」など、出来ない時はいつでも断る事ができます。自分や家族の生活リズムに合わせて活動できるのです。

私たち家族も学校行事や旅行の日程が先に決まっていればショートステイの依頼をお断りして、予定を優先しています。月曜日からの依頼を火曜日からに変更できないかコーディネーターさんに確認してもらって、保護者さんに日程をずらしてもらったこともあります。
知り合いの里親さんは平日は仕事を優先していて、週末だけショートステイ里親を引き受けています。
自分の仕事や予定を優先して決められるので、どなたでも無理なく始められると思います。
休みたい時は休める
体調を崩したり、家族の用事が入ったり、ただ単に自分や家族の心身のリフレッシュが必要な時もあります。ショートステイ里親の良いところは、無理なく活動できる点です。事前に受け入れ可能かどうかの確認連絡があるので、「今回は受けられません」と連絡のあったタイミングで、正直に伝えることができます。自分のペースを大切にしながら活動できるからこそ、お預かりする時には温かな気持ちで子どもたちと向き合えるのです。

あるベテラン里親さんはお孫ちゃんが生まれ、1年間ショートステイをお休みしました。「その間、コーディネーターさんからプレッシャーをかけられることもなく、家族の時間を大切にできました。」と教えてくれました。
休止、再開の自由
長期間のブランクがあっても、再び活動を再開することができるのもショートステイ里親の魅力の一つです。転勤や家族の体調変化、介護の必要性、自分自身のライフステージの変化など、様々な理由で活動を一時中断することがあっても、また生活が落ち着いたらいつでも戻ってくることができます。家族に予想外の変化があっても、無理せず自分たちのタイミングで関わる事ができます。

「親の介護で2年ほどお休みしましたが、また時間に余裕ができたので再開しました。快く迎えてくれて嬉しかったです」という里親Mさんのように、人生の変化に合わせて柔軟に関わることができます。
1年に1度、スタッフさんから今年の活動はどうするか、生活スタイルの変化がないか、引き受け可能なお子さんの年齢、性別など希望の聞き取りがあります。聞き取りのタイミングでなくても変更があればいつでもスタッフさんに相談でき、安心して里親ができる環境が整っています。
人助けをする喜び
産後うつや育児疲れ、突然の入院など、さまざまな理由で一時的に子育てサポートを必要とする保護者の力になることができます。
「あなたのおかげで助かりました」「久しぶりにゆっくり眠れました」「子どもが楽しかったと言っています」—そんな言葉をいただくと、社会の役に立っている実感が湧きます。
直接的な支援だからこそ感じられる、人助けの喜びがあります。

以前の私は子育てをしながら、ただ毎日を過ごしているだけでした。ショートステイ里親を始めてからは自分が誰かの役に立てるということ、支援者さんや他の里親さんなど、家族以外の人と関わりを持てること、同じ気持ちの仲間と共に活動できることに喜びとやりがいを感じています。
子どもたちと過ごす時間
子どもたちとの時間は、かけがえのない宝物です。様々な年齢、性格など多様な子ども達との関わりは私にとっても息子にとっても貴重な機会です。初めは緊張気味の子どもが少しずつ心を開き、笑顔を見せてくれる瞬間は私にとって特別なものです。

もう1年以上定期的にうちに来てくれるお子さんがいますが、会うたびにできることが増えていたり、成長を感じるのも喜びの一つです。最近は2番目のママとして受け入れてくれたようで、保育園の先生に私を「ママだよ」と紹介してくれたり、時々ですが「ママ大好きだよ」と言ってくれるようになりましたこ。息子と兄弟のように遊んでる姿を見るのは、私の癒しの時間です。
社会や人とのつながり
自分の子育て終了後、退職後にショートステイ里親を始める方もいらっしゃいます。
退職後、多くの方が感じるのは社会との接点が急に減ってしまう寂しさです。長年働いてきた職場での日々のやりとり、同僚との会話、仕事を通じた社会参加—それらが一気になくなることで、「社会から取り残された感」を抱く方も少なくありません。
ショートステイ里親活動は、そんな退職後の生活に新たな社会とのつながりをもたらしてくれます。特に、定年後の方々が持つ豊富な人生経験や知恵は、子育て世代にとって貴重な支えとなります。子どもたちにとっても、多様な大人との関わりは視野を広げるチャンス。世代を超えた交流が生まれることで、退職後も「社会の中で生きている」という充実感を味わうことができるのです。
また、定期的に開催される里親向けの研修会や交流会は、同じ志を持つ仲間との出会いの場にもなります。「最初は不安でしたが、同じような退職後に活動を始めた先輩里親さんに励まされ、今では私も新しい方のサポートをしています」という声も聞かれます。
ショートステイ里親として活動することで、退職後も社会との意味ある接点を維持し、自分の経験や時間を誰かのために活かす喜びを感じることができるのです。それは単なる「暇つぶし」ではなく、地域社会に根ざした、価値ある活動なのです。

里親同士の交流の場も定期的に設けられています。里親の悩みや解決法を共有し合ったり、勉強会に参加したりとショートステイ里親として自宅でお子さんをお預かりする以外にも楽しい活動があります。交流会で仲良くなった近所の里親さんと集まってランチに行ったりお茶会をしたりすることもあります。里親希望者への説明会で、結婚してから会っていなかった友人に数年ぶりに偶然再開し、その後また会うようになったこともあります。
家族の反応
「”次のショートステイはいつ?”と子どもにずっと聞かれるので、そろそろまた始めようかな」と活動を休止していた里親のSさん。ほとんどの里親の子どもさんは、ショートステイでお預かりするお子さんと遊ぶのを楽しみにしています。子ども同士はすぐに仲良くなって、いつの間にか一緒に遊んでいます。助け合いや思いやり、分かち合うことの大切さを自然と学ぶ良い機会になっています。

私たち家族はお預かりする子どもの話題で以前よりも会話が増えました。息子は一人っ子ですが、自分より小さなお子さんが来ることでお兄ちゃんのような意識が芽生えたようで、お手伝いをしてくれる事が増えました。息子はママのお手伝いができる自分に自信を持ち、自己肯定感も向上しているようです。
家族みんなで子どものケアをすることで、家族の結束も強まったように感じます。
まとめ
ショートステイ里親活動は、単なるボランティアを超えた、深い満足感と社会的意義を持つ活動です。子どもたちに家庭の温もりを提供するだけでなく、保護者の方には必要な休息と安心を届け、そして何より、私たち里親自身の人生も豊かにしてくれます。
子どもたちの笑顔、成長の瞬間に立ち会える喜び、そして「助かりました」という保護者の安堵の表情—これらすべてが、この活動の何よりの報酬です。また、家族全体で取り組むことで、私たち自身の家族関係も深まり、社会との新たなつながりも生まれています。
地域の子育て環境を支える一員として、ショートステイ里親は現代社会に欠かせない役割を担っています。「誰かのために」と始めたこの活動が、実は「自分自身のために」もなる—そんな素晴らしい循環を生み出すのです。
あなたも、子どもが好きな方、社会貢献に関心のある方、家族で意味のある活動を始めたい方なら、ぜひショートステイ里親という選択肢を考えてみてください。一人ひとりの小さな力が集まって、子どもたちの明るい未来と、誰もが安心して子育てできる地域社会の実現につながっていくことを、心から願っています。
子どもたちの笑顔に出会える—そんな温かな活動に、あなたも参加してみませんか?
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